夜の神殿に眠れをテーマにした6軒の家で織りなす
全6話の物語。
「二人が求めた世界」
語り部として、物語を語りながら案内するツアーを
個人、団体様向けに開催しています。
その語りのもとになっている物語。
この日誌は
・夜の神殿に眠れ
・メインストーリーver.5までの物語
上記二つのネタバレを含みます。
またそれをもとにした二次創作作品です。
注意してご覧ください。
ネタバレと二次創作ですよ?
本当に注意してくださいね?
第五話 「旅の始まり」⑥
トントントン…
小気味良いリズムを奏でる包丁の音でラウルは
目を覚ます。
ラウル
「ん。ん~~~」
体を起こし、伸びをするラウル。
(久しぶりに気持ちよく寝た気がするな。
野宿なのに体が軽い…ん?イイ匂いだな。)
マリィン
「あっ起こしちゃった?」
朝食を作っていたマリィンはラウルが動き出したのが視界に入ったため、手を動かしながら声をかけた。
ラウル
「おはよ。リィン。
朝食を作ってくれているのかい?」
マリィン
「ラウルさ…おはよ!
起きたらお腹空いちゃってて
だからなんか作ろうと思ってね。」
ラウルさんと言いかけて、止めたため、ちょっとなまってしまうが、そのまま話し続けることで誤魔化す。
ラウル
「リィン。『さん』付けでも構わないよ。
自然に話せる方がいいだろ?」
マリィン
「でも…ん~~~
じゃ、しばらくはそうしようかな。年上のヒトを呼び捨てにするの抵抗があるのよね。」
頑張ると言った手前、少し抗うように思案したが、
結局『さん』付けに関しては折れることにした。
ラウル
「ははは。そうか。」
(確かにあの頃よりも歳の差が広がった感じがするからな。でも何故リィンは歳をとっていないように見えるのだろうか…
『時渡り』したのもそれが関係あるのか?)
魔神としての日々は緩やかな時間の流れであり、見た目だけはさほど変わらなかった。
故に元に戻った姿は魔神になった当時と変わらぬ姿だったのだ。
ラウル
「ところで何を作っているんだい?」
マリィン
「何かのお肉と野菜を煮てるところ!」
笑顔で応えるマリィン。
ラウル
「何か???」
マリィン
「道具袋の中に入ってたんだけど、覚えてないから
わからないの。へへっ。
でも、食べられないものは持ち歩かないと思の!
だから大丈夫よ。きっと♪」
ラウル
「そっそうか…」
不安しかないラウルだが満面の笑みのマリィンを前にしてはそれ以上何も言えなかった…
マリィン
「そろそろいいかな?」
そう言うとマリィンは鍋の蓋を開ける。
あたりに美味しそうな匂いが広がる。
マリィン
「ん~~♪イイ匂いね♪♪♪
美味しそう♪」
そのままお皿に料理を盛っていく。
マリィン
「デキュルも食べる?」
デキュル
「!?
僕はチョコレートがあるから平気キュル…」
ポケットからチョコレートを取り出すデキュル。
マリィン
「チョコ?それご飯なの?
まぁいいか。
ラウルさん。ご飯にしましょう♪」
ラウル
「そうだ、ね…」
(デキュルのやつ。逃げたな…
だが、覚悟を決めるしかないな…
それに確かにイイ匂いだ…)
顔が僅かに引きつってしまう。
マリィン
「ラウルさん?
嫌なら食べなくてもイイですけど?」
ちょっと目が怒ってる。
ラウル
「いや!ありがとう。リィン!
いただくよ!!!
ん!?!?!?」
見た目や匂い的にはビーフシチュー。
だが謎肉であることが不安を残す。
そして、一口食べてラウルの動きが止まる。
マリィン
「えっ!?美味しくなかったかな…」
一口食べた後無言になってしまったラウルを心配そうに見つめるマリィン。
ラウル
「いや。違うんだ…美味しすぎてびっくりしている。まろやかな口当たりにコクのある味わい。野菜も味がしっかり染み込んでいるし…何より肉が柔らかい!
噛むとホロホロと溶けていきながら肉の旨みが口の中に広がる!」
ラウルの手が止まらない。
マリィン
「よかった♪」
ホッとしたマリィンも一口食べる。
「本当だ!おいしーーーーー♪」
笑顔になるマリィン
デキュル
「マリィン!僕もたまにはチョコレート以外
食べてみようと思うキュル!」
二人が美味しそうに食べてる様子を見ていたデキュルも我慢が出来なくなってしまう。
ラウル
「チョコレートが好きなんだろ?」
マリィン
「チョコレートが好きなんでしょ?」
二人の声がハモる。
デキュル
「!?ごめんキュル~!」
必至に手を合わせて、ごめんなさいをするデキュル。
ラウル・マリィン
「…はははっ・ふふふふ」
デキュルの様子に二人は目を合わせ、
そして笑い出す。
優しい時間が流れる。
to be continued