――その日、こころのステータス画面に、静かに異変が起きていた。
HPはまだ少し残っている。
笑顔という名の防具も、ちゃんと装備している。
けれど見えない数値――“がまんポイント”が、赤く点滅していた。
人はすぐにはパーティーを抜けない。
「まあいいか」の呪文を唱え、
「きのせいきのせい」の補助魔法をかけ、
何度もターンをやり過ごす。
しかし、ダメージは蓄積する。
小さな一撃でも、毎ターン受け続ければ、やがて限界は来る。
そして、ある瞬間――
※ こころは げんかいを こえた!
※ キャパシティが いっぱいになった!
回復呪文は きかなかった。
ベホイミでは 足りない。
もはやベホマでも、追いつかない。
怒りの特技を使うわけでもない。
メラゾーマを放つわけでもない。
ただ、静かにコマンドを選ぶだけ。
※ にげる
たたかいから りだつした。
パーティーから ひとり いなくなった。
それは裏切りではない。
全滅を防ぐための、最後の選択。
人が離れていくとき、
それは嫌いになったからではない。
“これ以上ダメージを受けたら、こころが壊れる”
そう判断した、勇者の撤退なのかもしれない。