夜空は星々の光で満ちていた
オーグリードの伝説にある大地の竜バウギアの如き漆黒の空に
浮かぶ天体はそれぞれが小さく光を放つ
月には遥かに及ばないそれはしかし
夜空に宝石のように散りばめられ、暗き大地を照らす
天より降り注ぐささやかな光に照らされるローブ姿の青年
その両手はそれぞれに不思議な光を宿している
青年はゆっくりと腕を回す
その手から放たれる光は彼の目の前に光の円を描く
そうして描かれた円の中央に星の光が集まって行く
![](https://cache.hiroba.dqx.jp/dq_resource/img/picture/fail/no_login_0.png)
その光を青年はひたすら見つめる
神秘的な光は次第に大きさを増し、何かを映し出す
「……見えた」
降り注ぐ星の光を集め、青年が見たもの
その歌によって未来を告げる星々の光が映し出したそれは
この世界の未来に他ならない
「大いなる災厄…
立ち向かう冒険者…
そして………死にゆく××」
「ーー!……ーーさん!………レシアさん!」
聞きなれた仲間の声によって冒険者レシアは
一気に夢から現実へ引き戻された
目の前にはレシアが密かに前衛職の師と仰ぐオーガの男
もっとも今は前衛職ではなく、魔法戦士だが
「仮眠程度と言ったでしょう
どうして本気で寝ちゃったんですか」
オーガが言う
「ん…ああ、ごめん」
まだ少し寝ぼけつつも謝るレシア
その横から少し高めの声が聞こえた
「仕方ないですよね!
なんせアストルティアの命運を賭けた戦いにこれから
挑むんですし!
私、もう足が笑ってます!」
声の主は銀髪が目を引くウェディの女性
レシアがリーダーを務めるチームのメンバーであり
スカウトした当時からたゆまぬ鍛練で今では他のメンバーにも
ひけをとらない実力となった努力の人だ
その武闘家としての実力はチームの誰もが一目おいている
「大丈夫ですよ。負けたら僧侶のせいです><」
逆立った髪型の男がそう声をかける
彼もレシアのチームのメンバーであり、その最強の座を占める
一人でもある
負けたら僧侶の責任と、僧侶たる自分にプレッシャーをかけ
なおかつその他のメンバーの緊張を和らげる
どこかふざけている普段の言動と共に彼はムードメーカーとして
仲間たちを和ませる
しかし、その言葉の根底にあるのは自分の僧侶としての実力への自信だけだ
そして、彼の実力は自信を持つに余りあるものであることは
この場の8人全員が知っている
世告げの姫によって告げられた世界に仇なす大いなる災厄
その討伐のため、彼らはここに集った
凶悪な魔物の巣くう闇の世界を突破し
災厄の王の玉座の前で小休止していたのだ
![](https://cache.hiroba.dqx.jp/dq_resource/img/picture/fail/no_login_0.png)
「よし、行こう」
レシアの一言で全員の表情は引き締まり、そして…
扉は。開かれた
知りうる限り、最高のメンバーを揃えた
戦術も完璧なのはここまでの戦闘で証明されている
負けるはず……ない
その時、レシアの脳裏に夢の言葉がフラッシュバックする
「大いなる災厄…
立ち向かう冒険者…
そして……死にゆく……仲間たち」
先ほどの夢で見た予言
その中で自分が呟いた言葉はいま明確に彼の脳裏に蘇った
一歩前へ出した足が止まる
しかし、もう仲間たちを止めることはできなかった
彼らは既に玉座の間へと進入してしまった
嫌な予感を拭えぬままにレシアも続く
部屋の中央で眠る巨大な怪物
災厄の王はゆっくりとその眼を開いた