レシアの冒険日誌

雪が静かに舞い散る夜だった
身内を呼んでささやかに催すつもりだった
祝宴の席に並べられた料理は冷えきり
座る者もいない




彼はふと、棚の写真立てへ手を伸ばす
数年前の今日、散らぬ桜咲き誇る都での宴で
撮られた写真だった



皆の集まる家であった
彼の屋敷にかつての喧騒はなく
家族と呼べるまでに親交を深めた
仲間たちはもういない



彼が彼の旗を掲げた日から幾年月が過ぎた
来るもの、去るもの、目を閉じれば
彼のまぶたに浮かび上がる
いっそのこと、この歩みを止められたなら
振り返り、戻って行けたなら
そんな思いがよぎるのも何度目だったか


だが、そんな思いなど知る由もないかのように
時は流れ、道は続いていく
彼の歩みは止まることはなかった








例えるならば、道なのだ
遠く、続く、一本の。
振り向いた先にあるものは
足跡であり、見知った景色
まだ見ぬ景色に出会うには
あの丘の向こうへと行くには
この道を歩んでいくしかないのだ


あの丘の先に何がある

いくら問おうと答える者はない
見渡す限りの大草原だろうと
果てなき大海原だろうと
見知らぬ新たな町だろうと
それを知る術は歩んでいる今はないのだ

ただ…

行けば、分かる














利用券、買いてぇ