ぷるぷる。ボクはわるいスライムじゃないよ!
好きな食べものはしおかぜ草!
あとジュレーワインでよ~く煮込んだいっかくうさぎ!
食べたことないけど!
ぷるぷる。ボクはいつか人間になりたいんだ!
あの伝説の、人間になったホイミスライムみたいに!
でもある日……
ボクは死んでしまったんだ……
その時の事はよくおぼえてないんだけど……
すっごい痛くて…すっごい悲しくて…
すっごい悔しかったことだけは覚えてるの……
ちくしょう……ちくしょうって………
人間になりたかったなぁって………
それからだんだん光に包まれる様な感覚があって……
だんだん温かくなってきて……
気がつくと、ボクは人間になっていたんだ!
……思ってたのとはちょっと違う気がするけど……
でも手もあるし、足もあるんだ!
2本の足で歩くのって難しいんだね!
ボク、いっぱい転んじゃった!
それから裸で歩いてたら、「コンシェルジュ」ってのにならないか?ってスカウトされて…
服をくれるって言うから、それになることにしたんだ!
ご飯も食べさせてくれるし!
人間の食べものはとーってもおいしいんだね!
そこでたくさん人間のことを学んだんだ!
ボクはどうやらドワーフって種族で、人間とはちょっと違うみたいだけど、別にいいんだ!
ボクは細かい事はあまり気にしない、そういうタイプのスライムだからね!
それから毎日コンシェルジュの勉強を頑張っていたら、ついに派遣される日が決まったんだ!
わーーーい!!
それでね、ボクが派遣されたのはドワーフのおじさんの所だったんだ!
おじさんは自分にソックリなコンシェルジュばっかり雇っている、自分大好き野郎なんだ!
きっと心理学的に言うと自己陶酔型の人格破綻者だね!
ボクはそのとき
(クソ気持ちわりーサイコ野郎だな)
って思ったけど、ここで頑張ることにしたのさ!
それからしばらくたったある日の事。
ドワーフのおじさんがいつもの様に帰って来たんだ。
うわっ………またお酒臭いな………
も~………また飲んで帰って来たんだ……嫌だな~…………
ボクはこの臭いを嗅ぐと決まって頭がズキズキ痛くなるんだ。
ううぅ……………
今日はいつもより臭いからいつもより痛いよ~……………
………………
そのとき何かを思い出した。
あれ……この臭い……何処かで………
そうだ………
スライムのボクが死んだときも
この臭いがしてたんだ。
記憶が一気に甦ってきた。
あの時はボクのいたレーンの町にいつもよりたくさんの人間が来るようになってたんだ。
みんな「旬のつりざお」ってのを持っていて…
そして一段と人の多い……雨の降る夜に………
ボクは逃げたのに……
こいつは酔っていたから背後からボクにぶつかってきて……
それから……………
うわああああああああああああああああああああ…………
スライムのボクを殺したのは
こいつだ。
それから怒りで目の前が真っ赤になって……
気付いたら鈍器を持っていて………
おじさんの背後から……
頭上高く振り上げた手を………
そのまま目一杯の力で降り下ろしたんだ………
何回も……何回も…………
あの時は無かった右腕で……
血が……イッパイ出て……
フフフ……
アリガトウオジサン
腕ハコウヤッテ使ウンダネ
足ハコウヤッテ
憎イヤツヲ踏ミツケルタメニ……
ボクガ話カケテルノニ………
オジサンハ動カナクナッテ………
………
そのあとの事はよくおぼえてないんだけど、
おじさんは故郷のアグラニに帰るって言ってたんだ。
でも
急におじさんがいなくなったらみんなが心配するから
だから
ボクが代わりにこの家に住むことにシたんだ。
見た目はソックリだし
ずっと見てたから全部知ってルんだ。
似てるコンシェルジュも雇った。
大丈夫。誰も気付かない。
コれはみんなの為なんだ。
おじさんは……故郷で元気に暮らしてるみたいだよ。
ぷるぷる。
ボ ク は わ る い ス ラ イ ム じ ゃ な い よ。
今日もみんなにおジさんがいなくなったことがバレないヨうに
こうやって元気に叫ぶんダ。
「ハ ウ ジ ン グ す る ん す」
って。