「これはモンスターでは…」
「武器です!」
濃い霧のせいで姿がはっきり見えづらい少女がきっぱり言った。
レイダメテスが砕けて数ヶ月。ある噂の確認に元ヴェリタ・ソルレイユ達が興した村近くの街道に市を立てると言う商隊に参加したクマヤンだが途中で深い霧に覆われ気がつけば目の前に姿のはっきりしない謎の少女が立っていた。
「しかし、どう見てもとつげきう…」
「とつげきまるです!」
遮る様に少女は叫んだ。突然現れた謎の少女はクマヤンを武器商人ですねと言い武器を買い取ってほしいと渡したのがとつげきまると言うとつげきうおだった。
「武器商人としては恥ずかしい話なんですがこれの種類は何なのですか?」
「片手剣です。」
剣と言うよりハンマーな気がすると思いなが眺めてると
とつげきまると目が会いとつげきまるは困惑した笑いを浮かべた。
「…」
怪しい…この霧と言い突然現れ何も名乗っていないのに武器商人と分かって
モンスターを売りつけようとする…。
(化かされてる?)
昔、武器商人が狐に化かされはがねのつるぎを格安で
買ったらひのきのぼうだったと言う話が頭を過ぎった。
「いやぁ…ひとくいサーベルやキラースターとか武器型
モンスターなら何度も取り扱ってますがこれは…」
「駄目ですか?」
表情は分からないが声から不安だと分かる。
(うーん、本物ならかなりの珍品だしな……)
何故かこの少女が化物の類とは思えない。どこかしらの貴族かと思わせる気品を感じてた。もしかしたらレイダメテスのせいで全てを失いモンスターを売るほど困窮した貴族の娘なのかも知れないとおかしな想像が浮かんだ。
「分かりました。買い取りましょう!」
「本当ですか!?」
少女の声が弾む。このとつげきまるが武器と世間に認知
されればこんな珍品を持っているのは自分ぐらいしか
居ないだろうと武器マニアの心が勝った。
「ただ、これの価値が自分には付けられないので言い値で買います」
また、武器マニアの心が勝った。買い留まれない様に
珍しい武器や防具の取り引きの時は殆どこうなる。
(一度、店に戻り飾るか?市の会場はもうすぐと言ったし暫く眺めていたし手元に置いとくか。)
買い取ったとつげきまるを熱心に眺めながらそんな事を考え霧と共に消えて行く少女に気づくことはなかった。
その後、無事に商隊と合流したクマヤンが市でウェディの若奥様に食材としてとつげきまるを買われそうになる事になるとは知る由もなかった。