「ここが魔公王とシャクラの決戦場か…」
岬の尖端に立ちクマヤンは呟いた。戦闘が行われた場所は海に沈み痕跡は
見当たらない。
「この沖に魔公王の離宮が沈んでいるはず…」
本当にここが目的地か不安が残る。村人から正確な場所を聞く予定だったのだがヴェリタ・ソルレイユの人達の口は重く詳しい事は聞けずにいた。
「色々あり過ぎたんだろうけどな…」
戦いからまだ数ヶ月しか経っていない中で部外者にあまり語る気持になれないと言う気持ちも分かるがこちらにも事情がある。
ある噂を耳にした。沈んだ魔公王の離宮が崩壊せず現存したまま
海底に沈んでると…それが本当なら魔公王のマントまでは行かなくても
強力な魔族の武器や防具が眠っているかも知れない!
それを確かめに市を開くと言う商隊に参加しここまで辿り着いた。
「どちらにしても海に出るしかないか」
そう言うと道具袋から折りたたまれた船の模型を取り出した。
以前、朽ち果てた神殿で手に入れた魔法の船で
折りたたれば袋に入る大きさになり魔法の力で1人でも自由に動かせる
便利な船だ。
「ここら辺のはず何だが…」
暫く船を進め地図を確かめる。離宮攻略に参加した
元ヴェリナード兵から獲た情報だが余りにも曖昧で
村で情報が得られなかったのが悔やまれる。
「とりあえずここから中心に探査するか」
そう決めると道具袋からマーメイドハープと人魚型の人形を取り出し
マーメイドハープを人形に取り付ける。
すると人形はハープをそれは見事に弾き始めた。
そして、クマヤンの船は泡に覆われ海に沈んで行った。
「上手く行ったな!」
感嘆の声を挙げた。楽器の操作なんて門外漢なクマヤンは大金をはたいて
自動操縦人形を作らせたがこんなにも上手く行くはと狂喜した。
「かなり沈んだとおもうんだが…」
辺りは暗くそれらしき物を見つけるのは困難だったが
それでも探査を続けると突然、海の底とは思えない明かりが見えた。
「あれが離宮か!」
興奮を隠さずに叫ぶ。船を近づけ離宮を観察する。
「結界か…これが崩壊せず残ったワケか」
恐らく魔公王が張った強力な結界だろうまだ張ったばかりだ凄腕の魔術師でも
破るのは不可能だろう。
「しかも、嫌な呪力を感じる…」
呪いの武具もよく扱う様になってから呪いに敏感になっていた。
「この呪いは余波な感じがする」
魔公王がかけたと思わせる呪いが強力過ぎて不用意に潜入すれば
巻き沿いにあいそうだと感じた。
「これでは潜入は無理だな…」
もしかしたら何処に裏口や脱出用の抜け道があるかも知れないが
呪いの不安がある。
「結界と呪いの解決だな。」
何時になるか分からないが準備を整えてまた来る事を胸に誓い
離宮から離れ海上に船を向かわせた。
そこでクマヤンは手記を閉じた。数百年前のレイダデメス事件の頃の
先祖の手記だ。数日前、マユミがヴェリナード王国からギブ先生名義で
召喚状が届き新たなクエストの予感と何時もの2人と旅立ったマユミの
後ろ姿を見送った時にフッと頭にこの手記が浮かんだ。
手記に離宮のことはこれいこう書かれていない。先代クマヤンは算段が付かす
諦めたのだと思う。先代同様に武器マニアである彼も離宮には興味はあるが
数百年経ち場所の特定はさらに難しくなり結界と呪いの解決方も無いので
諦め忘れていた。
もしかしてマユミ達が受けるであろうクエストに離宮が関係している…
「まさかな。」
そう呟き手記を大切に棚にしまった。
後日、帰宅したマユミに離宮での大冒険を聞かされ
酒場の外に響く驚きを叫ぶ事になる。