ある昼下り酒場にはパンケーキの美味しそうな香が
漂う。この酒場のプライベートコンシェルジュ
タチアナ特製のパンケーキだ。小さな妖精は専用の
フォークとナイフを持ち今まさに食べようとした
その時!
「見つけたぞ!」
勢いよく酒場のドアを開けてマスターベストを着た
オーガが叫んだ。
「きゃあ!」
タチアナが悲鳴を上げマユミが驚いてフォークと
ナイフを落とす。
「な、何っ!?」
そんな2人を他所に自信たっぷりにこの酒場の主人で
あるクマヤンは黒い本をカウンターに置きマユミを
見て言った。
「前に言っていた。専用武器の事だけどさ」
「うん」
「何かの本でみた気がすると思って探したらあったん
だよ!」
屋敷の書庫から探して来たんだとマユミは分かった。
書庫には世界中から武器と防具に関する本が大量に
保管されていてこのジャンルなら何処にも負けないと
豪語するほどだった。
「この本にエンゼルウィップと言う小さな妖精専用の
強力な武器が書かれてるんだよ!」
本を開いて記載されているページを開きマユミに
見せる。
「へぇー」
専用と強力と言う言葉に嬉しそうに羽を羽ばたかせ
本のとこまで飛んで来る。
「こいつは凄いぞ!悪魔やゾンビ系に大ダメージを
与え。逆に攻撃は防ぐ効果があるらしい」
興奮して言う。
「凄い!」
マユミも興奮する。
「更に力を解放すると使用者は石になってしまうんだ」
更に興奮するクマヤン。
「えっ!?呪われてる…」
マユミは引く。
「呪われてないさ。力を使わずに武器として使えば
問題無いはずさ」
使い方次第さとマユミをなだめる。
「それで、何処にあるの?」
石になるは気になるけど強力な専用の方が勝り
在処を聞いた。
「ドラゴンの洞窟と言う様々なドラゴンが棲み着いた
洞窟にあるらしい」
本を見て言う。
「ドラゴン…」
様々なドラゴンが居る洞窟を想像すると怖いものがあるが…。
「その洞窟って何処にあるの?」
やはり気になる。しかし…。
「分からない」
「えっ?」
「アストルティアとは別の世界つまり異世界にある
ようだがそこに行く方法が無いんだ」
マユミはそこで思い出した。書庫にある本は武器や
防具のことが書かれてれていれば小説や童話、戯曲等の
創作も所蔵されてる事に…。このクマヤンが持って
来た黒い本も誰かが書いた創作であるかもと…。
「今は行く方法は無いがいつかは行ける事が出来るさ」
その事実に気づき落ち込むマユミにそう励まし
微笑みかける。
「だからそれは何時になるのー!」
その小さな体からは想像出来ない叫びが酒場の外にも響く
その後、竜族の世界に行く事になるマユミはもしか
したらここにならあの洞窟が有るかもと内心ワクワク
してたと言う。