「起きて!ねえ、起きてよ!」
顔を誰かが揺さぶっている。声からマユミの仕業と
分かると全てを思い出し目が覚めた。
「どうなった!?」
慌て起き上がりまわりを見渡す。
「闇が皆に付いて人斬りみたいになっちゃった…」
不安な顔でマユミが言う。数日前に出合った人斬りと
同じ闇が纏わりついている冒険者達がまだ倒れていた。
「これは、不味いな…」
マユミが起こしたから先に目覚めたがすぐ冒険者達も
動きだすだろう。そうなれば冒険者同士で戦いが
始まり惨劇になる可能性が高い。
「どうしよう?」
マユミは不安を表現する様にクマヤンの周りを飛び
回る。クマヤンはマユミが不安を肩代わりする様に
慌ているせいか冷静に冒険者達を観察することが
できた。
「人によって纏われている闇の濃さが違うな…。もしか
して呪い耐性か?」
それは人斬りに破呪の巻物を使った時に闇が薄れて
行くのと同じに見えた。
「一体何が起こったんだ…」
数人の冒険者が起き上がった。
「なんだ!この黒いの!?」
現状を見て驚く冒険者を見ると闇に全く覆われて
いない。
(全員が闇に纏われていないなら何とかなるか?)
一部の望みを掛けて道具袋から大量の巻物を取り出す。
「今から破呪魔法を使う!目をやられたく無かったら
目を瞑れ!!」
起き上がった冒険者達に大声で忠告して巻物の紐を
解いた。
「全く、結構貴重品なんだぞこれ」
巻物に込められた魔法を開放しながら呟いた。
この巻物を作った呪いを解く魔法を研究をしている
男がかなりの高齢で大量に作る事が出来なかった。
「終わった?」
巻物を出した時に何をするか気付きすぐクマヤンの
ベストのポケットに隠れたマユミがポケットの中から
聞いてきた。
「あぁ全部使った…」
前回の事でこういう時のために濃いめのダンディ
サングラスを用意していて状況を見ることができた。
ポケットから飛び出しクマヤンの頭上まで飛ぶと
周りを見渡す。
「やった!成功だ!」
冒険者達に纏わり付いていた闇はほぼ消えてるのを
見てマユミは両腕を上げて喜ぶ。
「まだ、仕上げが残ってる。動ける冒険者の中で
お祓い出来る奴は闇に向ってはらってくれ!」
言いながら近くのまだ薄く闇が残っている冒険者に
お祓いをした。
「それで闇は完全に祓える!」
クマヤンがお祓いした冒険者から闇が消えるのを見た
冒険者達もお祓いを始めた。
「マユミも頼む!」
「任せて!」
冒険者全員で掛かったお陰でお祓いはそれほど時間は
かからず終わった。
「フー戦闘にならず済んで良かった」
安堵するクマヤンは天井の1点を見ながらホバリング
しているマユミを見つける。
「どうした?」
「あれ」
マユミが指差す所に微かに残った闇が集まっていた。
「まだ残ってたのか!?」
クマヤンがお祓いしようとしたその瞬間。闇が何か
形を作ろうとゴニョゴニョと動き出し妖精らしき
姿をとたん弾けて消えた。
「あれが言っていたやつか…」
呆気にとられた2人は消えた所を呆然と見続けた。