時間は少し前、グレン城のエルジュの部屋に、エルジュと師匠がいた。
「ある方からこの剣を、在るべき場所に安置してほしいと頼まれましてね」
「在るべき場所とは何処なんでしょう?」
エルジュが率直に聞いた。
「それが何処かを探し欲しいとも頼まれました」
やれやれと言う素振りで答えた。
「なるほど、師匠の力ですね」
エルジュは依頼者が、師匠の予知を知って頼んだ事をすぐ理解した。
「私の予知でも場所の特定は出来ませんでしたが」
師匠はひと呼吸置いて話がを続けた。
「この剣は安置される光景は見えました」
「流石ですね」
どんな過程があるかは分からないが、最終的に依頼は達成出来るようだと
エルジュは安堵した。
「ただ、その場に私は居ませんでした」
「えっ?」
「そこにはエルジュ、貴方が居ました」
驚くエルジュを鋭い目で見た。
「そこで、これを修行の一環として依頼を貴方に任せようと思います」
「修行ですか…しかし、何処を探せば良いか見当も付かない…」
唐突な話に、エルジュは戸惑った。
「まずはランガーオ山地に屋敷を構える。武器商人のクマヤンに合いなさい」
師匠はそう来ると予想し、胸元から手紙と屋敷までの地図を渡した。
「彼は今のアストルティアで、最も武器に詳しい人物です。彼にこの手紙を
見せれば分かるでしょう」
「武器商人のクマヤン…」
エルジュは布に巻かれた剣とクマヤン手紙を仕舞い地図を見た。
「彼ならその剣の事に親身になってくれるでしょう」
師匠は予知ではなく、クマヤンの評判を知って言った。
「分かりました。支度してきます」
エルジュが旅支度を始めたとき師匠は思い出した様に言った。
「そうでした、肝心の名前を言い忘れました。依頼人が言うにはマナの剣と
言うらしいです」
応接間にはエルジュとマユミとレオナルドの3人と床で丸くなっている
子狼がいた。
「エルジュさん?」
「エルジュで良い。それで、どうした?」
「いえ…何か考えているのかなと思って」
「あ…ああ、少し師匠の事を考えてたんだ」
2人が少しぎこちない会話をしていると。
「クマヤンは書庫に入ったら当分、出て来ないからお菓子食べて待った方が
良いよ」
テーブルの上に座り、お菓子をもりもり食べながらマユミは言った。
「そうだな」
「いただきます」
2人がそれぞれお菓子を取り食べ始めた時、ドアが開きクマヤンが入ってきた。
「無いかった…」
そうヒトコト言うとクマヤンは、ソファに腰かけ胸元に入れたスキットルを
出すと一口付けた。
「武器の本なら何でもあるんじゃ無かったの?」
マナの剣の正体を探る為に、手掛かりになる本を探したが見つからずに、
クマヤンは落ち込んだ。
「ああ、まさか無いとはな…」
呆然とソファに座るクマヤンにエルジュは尋ねた。
「それじゃ、これからどうすれば良いんだ!」
エルジュが困ってつい声を荒げる。
「1つ試したい事がある」
そう言うとポケットから、折りたたみ式の小さなナイフを取り出し、刃を出し
自分の左の手の甲を切った。
「「あっ!」」
その行為に3人が驚いて声をあげた。