「どうしたの?」
マユミが耳を押さえながら言った。
「こんな遠吠え初めて聞いた」
レオナルドはすぐそばからの、唐突な遠吠えにキーンと鳴っている耳を
押さえながら驚いた。
「あれは!」
子狼の雄叫びに3人が子狼に注目していた中でクマヤンは神獣を見て変化に
気付いた。
「神獣の動きが止まってる!?」
エルジュが神獣の方を見ると、痺れた様に動けなくなってブレスが吐けなく
なっていた。
「もしかすると、大魔女が目覚めさせた潜在能力なのか!?」
クマヤンは、子狼の魔物としての潜在能力が引き出され、超おたけびと思える
技を出したと考えた。
「凄い!神獣の動きを止めたよ」
マユミが驚くと。
「あんなのが僕達の中にもあるのか!?」
「ある気がする」
そう言うと、頭にしっかりと浮かぶイメージ通りの構え。
「アブソリュートレイ!」
レオナルドが叫ぶと、真横に同じぐらいの大きさの機械が現れ、レオナルドは
それを片手で取り、左手で機械に付いているグリップを握り機械の先を神獣に
向けた。
「なにこれ?」
マユミが興味津々に機械に近づく。
「分からない…けど、使い方は分かってる」
そう言うと、レオナルドはまだ痺れで動けない神獣を狙いトリガーを引いた。
「うわっ!」
「キャ!」
神獣に向けた先から収束された光線が飛び、レオナルドとマユミは同時に
驚いた。
「グォォォォ!」
命中した光線に、神獣はかなりのダメージを受けて、苦しそうに感じる低い
唸りが響いた。
「効いてる!」
エルジュが興奮して言う。
「ああ、大魔女が引き出してくれた力は凄いな…」
クマヤンが神獣の様子を注視しながら頷く。
「よし!僕もやってみる!」
レオナルドに触発されたのか、頭に浮かぶイメージ通りにやる事を決めた。
「こうして…」
右手でヒャドを、左手でメラを無自覚で同威力で発生させた。
「そして!」
両手を打ち合わせるように、衝突させるとスパークが起きエネルギーが
生まれた。
「こう!」
それを手元でまとめて弓矢を引き絞る様に構えると。
「メドローア!」
神獣に狙いを定めて叫び、光の矢がアブソリュートレイ同様の高速で神獣に
飛んだ。
「ギャャャャャァァーーーーーーーーーー!!!!」
メドローアはアブソリュートレイが当たった箇所に直撃すると、この世界全体に響いたと思わせる様な絶叫を神獣はあげた。
「神獣の体が崩れていく…」
「凄い…」
神獣の体はメドローアが直撃した箇所が消滅して崩れて行く様子にレオナルドとマユミはメドローアの威力に言葉を失った。
「やっーた!」
その光景にエルジュは勝利を確信した。
「まだだ!」
そう言ったクマヤンは大魔女が目覚めさせた潜在能力、戦陣の凱歌で自身の
身体能力をあげていた。
「神獣の…ダークリッチの魂を消滅させないと、何か起こされてしまうかもしれない」
今までの事を考え、全てを終わらすために、輝く斬無刀を持ち不死鳥天舞を、
発動させるしぐさを始めながら言った。
「とどめを刺す!」
クマヤンは宣言しながら、不死鳥天舞をその場で発動させた。
「ハアァァァー!!」
戦陣の凱歌の効果か、今までにない集中力で目の前に神獣の魂があるかの
ように魂を捉え斬った。
「神獣が…落ちて行く…」
レオナルドが言う通り、神獣は魂を消されたせいか、悲鳴も挙げずぐったりと
して落ちていくが、神域にたどり着く前に消えていった。
「倒したんだな…」
神獣の静かな、最後に先程とは変わってポツリと言った。