その瞬間、かげろうはクマヤンに斬りかかっていた。
そして、キーンと激しい金属がぶつかる音が道場に響いた。
「驚いた…不可視の剣〈瞬華〉を初手で受けるなんて」
かげろうの声に驚きと興奮が現れている。かげろうの剣が袈裟斬り斬る
動きから、瞬く間に下段から斬る所をクマヤンが斬無刀で受けていた。
「これは…体が勝手に動いたんだ…分かってやっていない」
自分でも思わぬ事で動揺していた。
「瞬華を体がかってに受け止めるだと?」
2人は刀に力を入れたまま話していた。
「俺の師匠が似た技の特訓に、何度も受けていつの間にかそうなってたんだ」
「その師匠といい君は、何者なんだ?剣はうちの流派なのは分かるが」
話しが長くなると感じ、お互いに力を抜き剣を引いた。
「師匠の先祖は500年前にこの道場出身だったらしい。分かれて
オーグリード大陸で道場を始めたと言うことだ」
クマヤンは適当に話しを作った。
「おかしいな…そんな話し聞いたことない」
かげろうは疑問に感じると。
「まあ、500年前の話しだから色々変わってるかもしれないし、道場も
師匠が居なくなり終わってしまったしな」
クマヤンの師匠はかげろうの先祖だと、言っても説明がややこしいので
終わってる事にした。
「まあ、そこら辺はどうでも良いんだが師匠は居ないのか…惜しいな」
目の前のオーガの実力から師匠の強さに、かげろうは興味があったので
悔やんだ。
「もう歳だったし仕方ないさ」
この時代に来る前は衰えを感じないほど元気だったが、500年後の
世界ではすでに墓の下だろうと思い言った。
「代わりと言ってはなんだが、ちょっとした技を見せよう」
「どんなのだ!」
かげろうは期待に目を輝かした。
「そこまで期待されるとな…紛い物だしな…」
思った以上の反応に戸惑った。
「期待させたのはそちらだろ」
かげろうは期待に満ちながら構えた。
「そうだな…」
指摘に小さく応えると同じく、構えるとすばやくかげろうの間合いに
入りから切り込んだと思った瞬間。
(いや、上段!)
そう瞬時に判断しかげろうはクマヤンの剣を受け止めた。
「瞬華?いや…これは?」
「次元斬でめくらましたって事ですか?」
2代目クマヤンは間の抜けた声を出した。
「だから紛い物だと言ったろ、瞬きしてる間に何て俺には出来ない」
笑いながら言うと2代目の出した酒を飲んだ。かげろうの目の前に
小さな次元の歪を作り、クマヤンが斬る体勢を変える僅かな時間を、
かげろうに気づかれないよう稼いでいた。
「まあ、何かされた事は直ぐ気付いたんだろうな受け止められたしな」
偽瞬華を受けた途端、異様な騒ぎにエミルスと御庭番衆が現れ、2人は
止められ決着は着かずに終わった。
「力は残ってないと言ってましたよね?」
カウンターの席で、楽しそうに酒を飲む初代をカウンター内から呆れた
顔で見た。
「帰るだけの力はな、あれで本当にすっからかんだ」
2人はかげろう共に、エミルスの長い説教をくらいクタクタになって
酒場に戻っていた。
「しかし、本当に天才だな彼女は数年後には師匠を越えるかもな」
偽瞬華に驚きながらも受け止める技量は本物の天才と思いながら
ジョッキの中の酒を飲み干した。