思い出、9
これでもここは東帝都内・・・・大笠原諸島の小姑島は春4月ですが南なので常夏の気候です。
小姑島の町立小学校5年生の一ノ瀬緑はジーパンの半ズボンに白いランニングに麦わら帽子ビーチサンダルを履いて網を持ち 虫取りに出かけていた。
岬の崖に 波しぶきがくだける場所で 海風に吹かれながら ペットボトルのお茶を飲んだ。
そのとき 目の前を まるで1枚の絵から抜けてきたように
美しい帆船が 通り抜けていった。
その舳先に 見たこともない美少女が まるで映画の1シーンの様に
物憂げに 海を見ていた。
自分と同い年位だが 幼く見えた。
そういえばきょうは母がメリ合州国からひさしぶりに返ってくる。
何の仕事してるのか知らないが、めったに帰ってこない。
ばあちゃんも姉ちゃんも朝から家を掃除してかたづけている。
あんたは邪魔だ! と追い出されたのだったが
時間になったら母を港に迎えにいかないといけない。じいちゃんの命令だ。
ほっといてもいいのに・・・母なんか 大人なのに。
昼前に 緑は母を港に迎えに行った。
なんと 港にはものすごく大勢の人が集まっていた。
連絡船に緑の母の姿が見えると その人たちはみんな
「万歳!万歳!万歳!万歳!峰子さん!」と叫んでいた。
緑「?」 (こいつら頭おかしいのか?)
だれかの足元に紙屑があった。大勢の人に踏まれた紙屑には『号外』とかかれ
『一ノ瀬峰子 東(ひのもと)国初女性ノーブル物理学賞受賞』書かれていたが
緑は5年生でも勉強嫌いで漢字が苦手で新聞をマンガ以外読まなかった。
母は大勢の人に囲まれてもみくちゃにされていて なかなか近づけなかったが ようやくそばにいくと
母「緑 パパを呼んできて!先について港の東側にいるはずだから。私は家で待ってるから、たのんだわよ!」
「?!」緑は赤ちゃんの時以来 父に会っていないのに 母は無茶を言う・・・
じいちゃんは「お前の父は東(ひのもと)国男子の鑑だ!漢の中の漢だ!」とよく褒める。
・・・顔も知らんのに 母め!
港の東側は無人灯台があるだけで ふだん人がいない。・・・・まあ行けばわかるだろ。
行ってみると、外人の観光客らしいのがいるだけで誰もいなかった。
緑は崖の向こう側まで探したが誰もいなかった。
父親を探して忙しいのに外人が声をかけてきた。
まわりをうろうろきょろきょろしてる緑に
外人の男「What a you doing now?」
・・・・・英語なんて わかるか!
小さな女の子まで出てきた。
外人の女の子「Who are you?」
・・・・わからんわい!
いくら探しても父はいなかったので仕方なく家に帰ったら。
いつも威張ってる町長が来て あろうことか母にペコペコしていた。
町長「あなたの銅像を島の主な場所に数か所立てたいのですが。いかがでしょうか」
峰子「やめてください!そっとしといてください!」母は町長を追い出すと緑に聞いた。「パパは?」
緑「いなかったよ」
峰子「どこいったのかしら?あんな小さな娘つれて」
そのときさっきの外人がニコニコしながら家に入ってきた。
峰子「まあ アルベルト 心配したのよ!」
さっきの外人「・・・・・(何か言ってるが緑にはわからにない)・・」
峰子「えっ?この子が知らん顔して帰っちゃったって?」
峰子「緑!あなた パパがそばにいたのに なにしてたの?」
緑「!?」
さっきの外人「・・・・・(何か言ってるが緑にはわからにない)・・・」
緑「おれは親父の顔 知らないぞ!」
峰子「ええええええ?!」
緑「俺の親父って外人?!」
東(ひのもと)国語をしゃべれない父と妹と外国語のわからない緑の
これが最初の親子の対面だった・・・・・