シャガール公子がのんびりしてるのにつられて外のあそび地の公園にうっかり出てしまったけれど、VIP専用エレベータにもどってビル中からリニアモータ・ラインの駅に出ないとすごい遠回りだった。
(緑くんは決して最短距離だからと花壇内に入ってそこを横断したりはしない)
弟についてエレオノーラものんびり珍しくビル外の公園に出てきた。
弟と二人で談笑している。
エレオノーラの前に公園のレンガ道があり、その道はとなりの超高層ビルへと続いている。
隣の超高層ビルはリケトニア公国の民放テレビの『リケトニア民放』のビルだった。
そのテレビ番組に出演していたらしい有名人がビルからでてきてレンガ道をリニアラインの駅にむかって歩いていた。周りにはおおぜいの若い女性がキャーキャー言いながら取り巻いていた。
往年の天才サッカー選手として高名なロド・ゴンザレス氏だった。56歳だが独身で大変なプレイボーイとして有名だった。
エレオノーラと弟のリュシスの前を歩いていく。
エレオノーラはないことにサッカーボールを左足で蹴っていた。
みごとなボールさばきである。エナメルのハイヒール履いてるのに・・・・
トーントーントーンと高く蹴った後、やにわに空中でボールを飛び上がってキックした。
ボールはまっすぐ、前方のロド・ゴンザレスに向かって飛んでいき、彼の後頭部に激突した。
つんのめって膝を着くロド・ゴンザレスに、やにわにエレオノーラが
「きゃ~~~~すいません~~~」
と聞いたこともないような、甘ったるい声を出して、ロド・ゴンザレスに駆け寄った。
「ごめんなさい~~~ぜんぜんサッカーなんかしたことないのに、弟のサッカーボールをちょっと蹴ったら、いきなりへんなとこへ飛んでって。お怪我がありませんか?」
ロド・ゴンザレスは
「大丈夫ですよ。美しいレディー」
と、エレオノーラに駆け寄られて、逆にうれしそう・・・・
エレ「あの~~お詫びがしたいですぅ~~~」
ロド・ゴンザレス「では、僕のおごるワインでも付き合ってくれるのがお詫びということで、いかがですか?素敵なレディー」
エレ「きゃーーーほんとですか?あなたのような魅力的な男性におごっていただけるなんて光栄です」
二人は、そのまま、リケトニアの巨大な地下街へ消えていった。
弟のリュシスは「ふっ」というとそのまま、VIP専用エレベータでエレオノーラの家に帰っていった。
一ノ瀬緑とシャガール公子は目が点になって、あんぐり口をあけて、その場に固まっていた。