一ノ瀬緑の妹の渚はエウロパの内海に出没する麻薬の密売組織と海賊団の内定を進めていた。
しかし、途中で発見され、なんとかマンホールの下水道に逃げ込み難を逃れたが、地上へ上がると海賊団のメンバーがおとり捜査で酒場の踊り子に化けて潜入した渚を探していた。
おいそれと地上には出れない。
着の身着のままで下水に逃げ込んだので、携帯電話も、財布も特捜官証ももっていない。
自分の特捜官助手で自宅に待機させてある順平との待ち合わせ場所のベルトム港まで来たが、下水の出口に鉄格子がはまっていて、港の下水の出口から出られない。
目の前に東野順平が港の突堤の待ち合わせ場所にいて見えるのだが、声をだしても届かない。
緑の妹で世界警察機構の特捜官の渚は、下水に逃げ込んでもう4日もさまよっている。
4日も水も食物も取っていなかった。
渚がようやっとたどりついた港の下水の出口に頑丈な鉄格子がはまっているが、遠くの突堤に、渚の連絡を待つ恋人の東野順平の姿は見えているのだが、港が騒がしくて声が届かない。
渚の体力もとっくに限界を超えていた。
一ノ瀬渚は念じた、「どうか順平、こっちを見て。この下水の出口で鉄格子の私に気づいて!」
順平は突堤をうろうろしていたが、商売女性らしい厚化粧の女性に声をかけられて、渚の悲願もむなしく、えへらえへら笑いながら、その女と手を組み、へらへらとどこかへ行ってしまった。
渚は絶句した。
港には夕闇が迫り、もう薄暗い。
こんな下水の出口にいる泥だらけの自分なんかだれもきづかないかもしれない。港は船の汽笛や、クレーンの轟音で渚の声など聞こえないのだ。
だけれど、順平の立っていた後に、だれか来た。
それがだれかはもう夕闇があたりを覆っていて、わからなかった。
真上には下水の出口のマンホールがあるが、何か重いものが上に置かれているみたいで、渚の力では、開けれなかった。
下水の泥だらけで、体力も限界で、鉄格子越しに港の突堤の見える泥水の中に渚は座り込んだ。
そのとき、頭の上のマンホールが、ぎぎぎぎぎ、と音を立て、誰かが開けようとしている。
渚は、覚悟を決めて、マンホールの下から声を限りに叫んだ。
「だれか知らないけど、警察に連絡してください」
そのとき、マンホールの蓋が開いて、聞きなれた兄の声が聞こえた。
「ドブネズミみたいだなぁ。おまえ」
兄の緑の顔が見えた。
渚は、半べそをかきながら、兄貴の手に右手の拳骨でぐりぐりをした。
緑は言った。「お前ひどい格好だなぁ」
渚「もう、来るのが遅いのよ。にいさん」
緑「あてずっぽうで、このマンホールを開けたら、まさか、お前がいるとは思わなかったよ。俺の感も大したもんだな」
渚「にいさんたら・・・・・」
マンホールから這い出てきた渚は、泥だらけではあるが美しい鮮やかな踊り子の衣装を着ていた。
そのとき、マンホールから這い出てきた渚を見つけた海賊の一人が即座に仲間を呼び集めた。
鉄パイプをもった武闘の心得のあるごろつきが30人、ふたりを取り囲んだ。
ごろつきどもはニヤニヤ笑っている。
しかし、緑が20人ほどを、柔道無双して1分でまたたくまに港の海の中に投げ込んだ、そのあいだに、緑のもってきたチョコレートを口に放り込みペットボトルのお茶を飲んだ渚は「ふっかーつ」と叫ぶと残りの10人を美しい鮮やかな踊り子の衣装で柔道無双して同じく海に投げ込んだ。
一ノ瀬渚が手に入れた証拠により、ベルトム港に巣くうかなり大掛かりな麻薬密売と同時に客船を襲う海賊団は、渚の手に入れた証拠により、根こそぎ、世界警察機構に逮捕され連行されたのだった。
あとで、順平は渚にボコボコにされた。