トロン事件
メリ合州国の軍事兵器研究所で事故が起きた。
コンピュータが暴走し、その場にいた科学者1名、兵士2名が生きたままデーター化され、転送され、生きたままコンピューターに閉じ込められた事件である。
この3名は、コンピュータに閉じこめられたあとも、コンピューター内で生存していた。
前代未聞の事故であり、その3名を救出するため、世界中の科学者、学者が集められた。
一部、軍事兵器研究所ということで協力を拒否した科学者が若干名いたのは残念なことである。
あらゆる方面の第一人者の科学者、技術者、学者が38名集められたが、いかんせん前代未聞の事故であるため、誰にもなすすべがなく、ただ時間が過ぎ去るのみであった。
大統領は最後に、あの13歳の少女の天才物理学者のあの子なら、ひょつとしたら助けられるかもしれないと考えた。
藁をもつかむ思いで、大統領は友人の世界的大富豪ヨハネス・アレクサンドロス氏に連絡した。
彼が自分の孫娘であるその13歳の天才少女物理学者をつれてきていた。
13歳にしては小柄でまだあどけない顔のその少女は、大勢の科学者たちと大統領を前におずおずと
「エレオノーラ・アレクサンドロスです。よろしく」と言った。
エレオノーラ「ここへ来る前に、ご連絡したデーターは用意していただけましたか?」
大統領「ああここに用意してある。」
エレ「ありがとうございます」
少女は大統領の出したいくつかの分厚い大きな茶封筒を受け取ると、なかから数字のいっぱい書かれた紙を取り出し、メモ用紙と鉛筆でなにか計算を始めた。
40人の大人たちが誰も何も言わなかった。ただ少女の鉛筆の音だけがさらさらと響いていた。
一人の若い女性物理学者が、コーナにある小さなバーへいき、そこの冷蔵庫がら何かをだしてごそごそしていた。彼女はチョコレートパフェを作ると、エレオノーラの横に笑顔で
「お嬢ちゃん、少し休んで、どうぞ召し上がれ」と言った、
エレの顔はぱっと輝いて、「ありがとうございます」と言った。
エレは、スプーンでチョコレートパフェを食べた。
生クリームとチョコレートを口の周りにいっぱいつけながら右手でメモ帳をのぞきこみ、鉛筆をもって、「ふんふん」とうなずいた。
若い男性物理学者がエレオノーラのメモ帳を横からのぞきこみ
「すごい数式だな。おれにゃあ見当もつかない。この子ホントに天才だなぁ」
その若い男性物理学者は、当世随一の天才物理学者と称えられるシグルド・セーガン博士だった。
シグルド・セーガン博士は、エレオノーラを指さして隣の女性物理学者に行った。
「この子、まじ天才だよ。おれなんか足元にもおよばないや」
エレオノーラは、なんと黙々とそのまま6時間も、その場で計算を続けた。
その場にいた物理学者の中には仮眠する者も出始めた。大統領は横の長椅子に毛布にくるまって仮眠していた。