一度決着した問題が、再び炎上するコトってあるよね。
小学生のころ、一度は通る究極の選択
『カレー味のUNK or UNK味のカレー』
UNKの味を知ってんのかいな? って思ったけど・・・
『いくら見た目と味がカレーでも、UNKを食べるわけないじゃん!』
身も心も幼かった当時のオレは、そうカンタンに結論付けていた。
もちろん、オレの友達も皆、同じ意見だった。
そしてオレは、共通した意見に埋もれることに居場所を求めてしまう
日本人固有の安心感に、溺れてしまっていたのだろう。
ところが・・・
そこそこ プークプック なボディに成長し、額の面積が増え ズラ・プリーズ な状態になったこの歳で
この子供じみた究極の選択が再び炎上するとは、当時のオレは想像だにしなかっただろう。
1月のある日。
TVでカレーの特集を見ていたオレは、はるか遠い『究極の選択』の記憶をぼんやりと思い出していた。通常であれば、そんな事を真剣に議論していた過去の幼い自分をクスッと笑って終わるのだったが。
なぜか不意に、より詳細な様子を想像してしまったのだ。
『ひとことで風味とは言うが・・・。色・形・臭い・味・食感まですべて完璧にUNKであるカレーを、オレは本当に口に運べるのか?』
・・・・・。
心乱れたオレは家を飛び出し
悩みを吹っ切るように ホワイトベース号を夜通し駆ったのだが
オトナになったオレは、子供の頃のような屈託のない答えを導き出せなかった。
翌日。
出社すると、いつもは明るい上司が、思いつめた顔でオレに近づいてきた。
『カントクくん。 昨日のTV、見た?』
部長の眉間に波打つシワの本数を見て、オレはすべてを悟った。
『ええ、見ました。 カレーとUNKの件ですね。 部長は、その・・どのようにお考えですか?』
『私は・・。 私は、自分の気持ちがわからないのだよ。』
二人は同じく願っていたはずだ。
『 こんな汚い悩みは、早く拭き取って水に流してしまいたい 』
・・・と。
困惑したオレに、部長は指示を出した。
『カントクくん。 第二会議室をリザーブして。 決着を、着けよう。』
禁断の答えを、出す時が来たのだ。 オレは膝に置いた手に力を込めて席を立ち、会議室の扉のサインを「使用中」に切り替えた。
二人が会議室にこもってから、どれくらいの時が流れただろうか?
・「どんなにカレーっぽくても、UNKを食べることは出来ない」という、人間の尊厳
・「カレーと思い込めば UNKは本物のカレーをも超える」という、心の弱さが生む妄想
カレー と UNK。
単体でみれば、あまりに身近な両者に、
こんなにも深く難しい選択を迫られるなんて・・・。
二人の間に疲労と焦燥感が漂い始めたその時
『カントクくん。 一人でどちらかを選ぶのではなく、二人が必ずどちらかを食べなければならない状況で、考えてみよう。』
部長の提案によって問題は緊張感を増し、オレの人生すら左右する要素まで帯びてしまった。
なぜなら、自分の人事評価を握る上司に、誤った選択を押し付ける事は出来ないからだ。
カレースプーンを握りしめたオレの右手に、ジワリと冷たい汗が滲んだ。
そしてオレの脳は、恐ろしいスピードで電卓を叩き
結論を出すまで8.6秒もかからなかった。
カ:『 部長。 オレ 食べますよ、UNKの方。』
部:『 かッ、カントクくん!? 』
カ:『 はは。 気にしないでください。 好きなんです、UNK。』
部:『 カントクくん・・・ 』
カ:『 部長・・・ 』
部:『 カントク・・・ 』
窓からこぼれる夕日を背に見つめあう二人に
もう、言葉は要らなかった。
数日後、社の掲示板に人事異動の通達が貼り出されていた。
『 営業部マネージャー カントク氏 を 3月1日より 受付嬢の職務に任ずる 』
ふっ・・・。
どうやらオレは、選択を誤ってしまったようだ。
頑張ってUNKにチャレンジした報酬として、オレは受付嬢の座をゲットしちまったよ。
ああ、娘になんて言おうかしら。
「わたしのパパ、受付嬢なんだ!」
ま、まあ~ それもアリなんかなぁ?
なんて思っちゃったりするオレは、最近 はやりの乙女系中年。
ところで、オレを飛ばした部長が
『 UNKをチョイスしたオレを危険視している 』 のか?
『 実はUNKが好物だった 』 のか?
一介の受付嬢となった今のオレには、もう知る術もない・・・。
☆彡お時間あったら、過去日誌もご一読プリーズ (*ノωノ)
☆彡下品な内容とわかっていても、書かずにおれませんでした。ごめんね!
☆彡フレンド様 ひっそり募集中です!