ただひとつの使命のために生きてきた。
それ以外の出来事や感情など、微塵も気にかけることなく。
恋愛なんて、ボクには必要がなく、そもそも無縁なものだと思っていた。
でも、そうなんだ。
それがボクにとって、とても大切なモノだったと・・・
気付くのが、遅すぎた。
長い旅の果てで、彼女とボクは、やっとたどり着いた。
この世界を狂わせた、全ての邪悪と災厄の源である祭壇。
選ばれし巫女である彼女を ここまで護り導くのが、ボクの使命。
彼女が この祭壇に浄化の祈りを捧げれば
ボクたちの世界を蹂躙する魔獣と瘴気を、一瞬で無へと昇華出来る。
しかし、その祭壇へつながる唯一つの道には
鋼の鱗をまとった蒼の巨竜が立ち塞がっていた。
まともに戦っても、ヤツのまとう鋼の鱗は、強力な剣撃も魔法も、全て弾いてしまう。
ボクがヤツの餌食になる事で、彼女を祭壇に走らせる時間を稼ぐ。
それが唯一の策だった。
もちろん、この策の真意を彼女には告げていない。
『 よく聞いて。 ボクが先に仕掛けて、ヤツの攻撃を受け止める。』
『 その隙に、私が祭壇に走ればいいのね。 』
ボクは、巨竜の挙動から目を離さず、コクリとうなずいた。
『 いい? 絶対にボクの方を見ちゃダメだ。 祭壇だけを見て走るんだよ。 』
ボクの横顔をまっすぐ見つめながら、今度は彼女がコクリとうなずいた。
そして、巨竜が動きを止めたその瞬間。
ふたりは同時に地を蹴り、それぞれの目標に向かって走り出した。
・・・あれ?
なんで、ボクはこんな事をしてるのだろう?
何のために?
ああ、そうだ。 世界を救いたかったんだ。
いや・・・、違う。
この人を、守りたかったんだ。
ずっと一緒に戦ってきた、この人を。
ボクは、いつの間にか、好きになっていたんだ。
くそ。
気付くのが、遅かったよ。
恐怖で震える体を立て、竜の足元でその巨体を仰ぎながらボクは心の中で叫んだ。
( さあ、遠慮なくボクを殺せ! )
願いは叶えられ、振り下ろされた巨大なツメがボクの身体を貫いた。
ここまでは計算通り・・・ では無かった。
激痛で歪んだボクの視界には、足を止め、血まみれのボクを呆然と眺める彼女の姿が映っていた。
『 馬鹿! 足を止めるな!!
祭壇へ・・・。ボクの屍を越えて行け!! 』
ボクの一喝で正気を取り戻した彼女は、力強く頷いた。
しかし、彼女が踏み出した第一歩は、よりによってボクの大切なパーツを踏んでしまったのだ。
『 あふッ!? 』
『 あ、ごめ!? 越えて行け! っていうから・・・。 』
『 え、いや、それでイイんだ。 でも、どうせ越えるなら・。』
ボクはおもむろに鎧を脱ぎ捨て、彼女の靴の裏をよりダイレクトに感じられる準備を整えた。
『 さぁ、祭壇へ! ボクのこか・・・いや、屍を越えて行けッ!! 』
彼女は眉をひそめながら小さく頷き、
2度目の屍越えにチャレンジした。
『 こ、ここかな? 』
『 そ・・。ら、らめ・・・。 』
『 え? ダメ!? 』
『 ううん。 や、やめちゃ らめ・・・ 』
『 だったら このオレ様が もっと強く踏んでやろうか? ああん? 』
『 ああ!! このパターンは!? 』
『 保釈期間中だってのに、ずいぶんいろいろ元気じゃねえか、この変態ヤロウ! 』
巨竜もあきれるこの騒動の隙に
選ばれし巫女は祭壇に祈りを捧げ、世界は救われた。
ボクの使命は終わったのだ。
しかし、平和の立役者であるはずのボクを出迎えてくれたのが
彼女でも家族でもなく、刑務所のイカツい看守たちであったことは
もはや説明するまでも無いだろう。
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