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トキメキナース

カントコ

[カントコ]

キャラID
: LM586-013
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: バトルマスター
レベル
: 127

ライブカメラ画像

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カントコの冒険日誌

2020-07-26 04:46:13.0 テーマ:フレンド募集

隔虜の川

「 あなたは、この川を渡れない。
  だって、あなたは、そういう人だから。 」


ぼくは、目の前を流れる川を見た。

つるりと光を返す水面は 時間が止まったように穏やかで
この下に水が流れているとは とても思えなかった。



「 でもぼくは渡る。
  君の方に行くために、ここに来たのだから。 」









ぼくは、彼女が好きだった。

夫婦になったのは、まったく親同士の事情だったけど
彼女をひと目見て ぼくは彼女の虜になった。


彼女の唇は、血に濡れたように妖しい紅色だった。
まるでぼくに見られるのを拒んでいるように 鮮やかに見えた。

彼女の肌は、透き通るように白かった。
その彼女の肌の向こうには、見知らぬ男の影が透けて見えた。


彼女には、想い人がいた。
結ばれたいのは、ぼくではなかった。


でも、それでも。ぼくは彼女が好きだった。
手放す事はできなかった。


「 いつか、彼女はぼくの事を愛してくれる。 」


そう信じて、ぼくは良き夫であろうと努力した。
たくさん 働いた。おいしい食べ物も、ちょっとした贅沢も、
ぼくは、ぼくの出来る限りの全てを、彼女に捧げた。

だけど、彼女が変わる事は、なかった。


彼女の瞳はいつも
彼女の中に透けて見える ぼくの見知らぬ男の影だけを追っていた。

でもぼくは、彼女を愛し続けた。


壊れながら、届かない彼女を追い続けた。













ある日、彼女は冷たくぼくに告げた。

「 もう、無理をしないで。 あなたは、私に届かない。 」


そんなの、わかっている。 気付いている。
だけど、ぼくは君を愛しているんだ。 他の誰よりも深く!


「 あなたは、わたしを好きなのではなくて
  わたしを好きなあなたの事が 好きなのよ。 」


ぼくには、彼女の言葉が呑み込めなかった。
呑み込むのが怖かった。


「 でも、あの人は、わたしの事を見てくれた・・・ 」

彼女は、紅い唇を小指でなぞった。


「 この唇は、彼のもの。
  だから、あなたは怖くて触れられないのでしょう? 」


ぼくは目を閉じ
喉の奥に引っ掛かっていた 彼女の言葉を呑み込んだ。

閉じた瞼は苦しさを消してくれなくて
ただただ、涙ばかりがこぼれた。



目を開けると、ぼくの足元には血にまみれた彼女が横たわっていた。

そしてぼくの手には、彼女を殺めた凶刃が握られていた。












ぼくの前に横たわる、静かな川。

この川を渡れば、ぼくは、やっと彼女に届く。


ぼくは、おそるおそる水面に足を近づけた。
真上から見下ろした水面は ちらちらとした光の反射を失い
ふっと真っ黒に染まった。


触れたら、この黒い川はぼくを呑み込むだろう。
そうか、この川は。渡るのではなくて、
命を呑まれる事で向こう岸で行くのか。

でも、恐怖など、微塵も無い。




「 君の方に行くために、ここへ来たのだから。 」


ぼくは、真黒な川の水面に、足を付けた。

死ぬのは怖くない。
でも、この黒い川は、彼女の立つ岸へとぼくを導いてくれるのだろうか?



川に呑み込まれる瞬間、ぼくの頭の中に、見知らぬ男の黒い影がよぎった。












結局、川に入った夫が彼女の前に姿を現すことは無かった。


「 渡れない、と言ったのに。 」


彼女は、かつて夫が立っていた向こう岸に目を遣った。


「 だって、渡れなかったのは、
  あなただけでは無かったのだから・・・。 」


透き通った彼女の頬から、大粒の涙がぽたぽたと流れ落ちた。







☆彡 お時間あったら、過去日誌もご一読プリーズ (^_-)-☆
☆彡 「隠世(かくりよ)」と「隔(かく)虜(りょ)」をかけてみました
☆彡 届かないからこそ「想う」のかもしれませんね。
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