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うっかり大魔王

ラダクロウ

[ラダクロウ]

キャラID
: QG683-328
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: ガーディアン
レベル
: 131

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ラダクロウの冒険日誌

2020-07-08 01:28:40.0 テーマ:その他

暇とエル娘と七夕と


遊び心でお送りします。

七夕ショートストーリーです。


*「暇だ。客一人来ない。

エル娘「理由を教えましょうか旦那様。

 出店にやる気なさげに腰掛けるウェディの男に、店員のエルフ娘が内職する手を止めずに横目で呆れるように睨みつけた。
 言われる事が分かっているのかウェディの男はそっと顔を明後日の方向に逸らす。
 エルフ娘は浅くため息を吐いて抑揚のない平坦な声で言い放った。

エル娘「あんな恐ろしげな置物を整然と並べれば人っ子一人寄り付きませんよ。そもそもなんでお墓のオブジェですか人形ですかオマヌケですか? 商売したいのか何をしたいのか理解出来ません旦那様の感性を疑います。大体において冒険で稼いで来た金貨で買ったのがなんで全部呪いグッズですか! フツーはっ食材とかっ氷を保存する何かとかっジュースの元になる果物とかっ、色々あるじゃないですか!!」

*「あー、うん・・・」

エル娘「あーうんじゃありません、旦那様は私を何だと思ってるんですか! そうやって邪魔をして遠くから覗いてうふふと嘲笑うのが趣味ですか変態ですかっ」

 両手で耳を塞いで露店から抜け出し、脇に立て掛けておいた剣を掴み上げると腰ベルトの左に吊るしてそそくさと駆け出すウェディの男。

*「クエスト思い出したから出かけてくる」

 と、ポツリ。
 エルフ娘は顔を真っ赤にして椅子から立ち上がると、内職していた毛糸の編み物を両手でお腹の前でぐしゃりと潰して遠のく背中に怒りをぶつけた。

エル娘「まだいい足りませんよっ、ええ足りませんともっ! わかってっって、本当に出掛けるつもりですか!?」

*「緊急なんだよ本当に。いってきまー」

エル娘「当分帰ってこなくて結構ですっ! 呪いグッズ全部処分しときますからね!!」

 小走りで逃げ去る主人の背中に、エルフ娘の悲痛な怒りの声が突き刺さる。
 彼は「ああ、恐い恐い・・・」と小さく呟いてジュレットの町へと向かう渡し舟の桟橋へと急いだ。

*「ううむこれは当分帰れんなぁ。しかし、あんなにも怒らなくてもいいだろうに・・・」

 遠くエルトナ大陸のとある村で、彼は途方に暮れていた。
 丁度祭りの様子で様々な出店が立ち並び、多様な種族のカップルが楽しげに歩み、店を覗いてはいちゃついている。
 独り身の冒険者には縁の無い光景だ。
 彼は少し離れた小川沿いのベンチに腰掛けて、なんとはなしに祭りにはしゃぐカップルや家族連れを遠く眺る。
 そうしてぼーっとしていると、出店から休憩で出て来たドワーフの男が焼きモロコシを二本握りしめて彼に気付いた様子で近付いて来た。
 無遠慮に彼の左隣に腰掛けると、何も言わずにずいと焼きモロコシを一本突き出してくる。

ドワ雄「ここいらじゃ見ねぇ顔だな。お前さん、冒険者ってやつかい?」

*「なんで」

ドワ雄「そう邪険にすんない。ほれ食いねぇ焼きモロコシ」

*「んな無駄遣いする金はねーよ」

ドワ雄「奢りだバカやろう」

*「奢りねぇ・・・」

 強面だがどこか憎めない顔をしたドワーフの男は、見た感じ裏表の無いように見える。
 祭りの雰囲気もあいまって、ウェディの男はほぅとか細く吐息を漏らすと、差し出されたソレを受け取って金色に焼き上がった少し焦げのある物体を見下ろし、つまらなそうに眺めていた。
 そんなウェディの男の様子を見て、ドワーフの男は深くため息を吐く。

ドワ雄「お前さんよぉ、そんなしけたツラしてんじゃねぇよこの七夕に」

*「七夕?」

ドワ雄「エルトナの祭りだよ。年に一度、ヒコボシ様とオリヒメ様がたった一日再会される祭りさ」

*「へぇ。所変われば祭りも様々だな」

ドワ雄「お前さん、女とうまくいってねぇだろう」

*「女がいれば、しけたツラしてこんな所に座っちゃいないよ」

 破れかぶれと焼きモロコシに齧り付くウェディの男。
 ドワーフの男はその様子に「がはは」と大きな笑い声を上げて、立ち上がると
言った。

ドワ雄「祭りの出店にゃあ、女向けの土産品を売ってる所もある。覗いて行きな」

*「だから、女なんて、」

ドワ雄「気の利いたもんでも買って帰んな。そうすりゃ、機嫌も直るってもんだ」

 言いたい事だけ言い残して、ドワーフの男はさっさと自分の出店へと戻って行く。
 その後ろ姿を見送って、ウェディの男は人知れず呟いていた。

*「気の利いたもんねぇ・・・。髪飾りでも、買って帰るか・・・」

 ウェディの男は漠然と思って天を仰ぐ。
 物言わず空の星々は輝き、夜空を横切る天の河が雄大な流れを見せている。
 彼は「よし」と小さく気合を入れると、エルフ娘に買って行くプレゼントを探しにカップルや家族連れで賑わう祭りの通りに、出店の中に勇んで足を運んで行った。


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