〇月〇日
私は一人ヴェリナードに向かっていた。
本当はもっと、違う形で帰ってきたかった・・・
「ディオーレ。よく無事で戻りましたね。」
お母様・・・・・
「あれから、早いもので一年ですね・・・」
そう言うお母様の前で、私は泣き崩れた・・・・
お母様は黙って静かに、私が泣き止むまで待っていてくれた。
「あなたの旅のお話を聞かせて頂戴。」
仲間のこと、旅先での出来事、何処の場面を切り取っても、そこにはパインの姿があった。
「そうですか・・・・・。」
「一度会ってみたかったものですね。」
「とても、優しくて・・勇敢な・・・あなたの弟に・・・」
「ディオーレ。あなたは一つ忘れてはいませんか?」
「あなたにしか出来ないこと・・・」
「あなたは、まだパインからのお手紙の返事を、返してないではありませんか。」
「大好きだったのでしょ?」
「あなたの・・・」
お母様の言葉で、踵を返し、玉座の反対側にあるテラスに走った。
シェルブリッジを全速力で走り、ヴェリナードの町並み、海が見渡せるテラスの先端に立った。
呼吸を整え、静かに、深く、息を吸い込み・・・
あの時以降歌うことがなかった・・・歌うことさえ忘れていた・・・
パインが大好きだった歌・・・
空に、大地に、海に、どこかで聞いているパインを想い・・・
大切な仲間と、そしてパインが教えてくれた。
強さ。優しさ。笑顔。勇気。悲しみ。
全ての思いを乗せて・・・・パインへの返事・・・
その歌声は
戦いに行く者には 強さを。
愛を育む者には 優しさを。
新たな生命を授かる者には 笑顔を。
道に迷う者には 切り開く勇気を。
悲しみに暮れる者には 共に分かち合う慈しみを。
この歌声を耳にした者全ての幸せを願って・・・・歌い続けた。
そして・・・
この日を境に、人々からこう称される様になった・・・
カリスマは 初代女王ヴェリーナ様
美しさは 美の神と言われる 現女王ディーナ様
歌声は 史上最高の歌姫と言われる 王女ディオーレ様
パイン・・・お願いしてくれたの?
ありがとね。
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最後までご覧頂き有り難うございますm(__)m
非常に個人的な妄想、物語日記になっておりますが、過去の投稿もご覧になって頂けると幸いです。
次回、最終回です。