「お~い!誰かぁ!!ユナティさ~ん!居ないんですか~!?この際マージンでもいい~!誰か~!!!」
マージンが立ち去った留置施設。後を追うように飛び出したユナティも既におらず、拘束されたまま転がったフツキの助けを求める声がむなしく響く。そこへ駆け足で近づいてくる、小さな足音。
「やっぱりフツキさんだ」
「ハクト君!?」
「今縄を解きますね」
感動にむせび泣くフツキの背に回り、ロープを解いていくハクト。
「マージンと一緒に来ていたんだね、ハクト君」
「ええ、僕は別室で待機させて頂いてたんですが…。フツキさん、いつも父さんがご迷惑をおかけしてすみません」
ヴェリナードの外、安全な所まで誘導したいが時間がない、マージンには事態収拾の協力を仰いだので、留置施設に残る男と合流し、己の身の安全を確保してほしい。突然の爆音に対処に惑っていた所へ駆け付けたユナティの指示に従い、ハクトはここへやってきたのだった。
「いやいやいいんだよハクト君、君は何にも悪くない」
荒野に咲いた一輪の花。広大な砂漠で見つけたオアシス。マージンと関わる中で、何度ハクト君に闇堕ちから救われた事だろうか。なぜあんな悪魔から、天使が生まれたのだろう。フツキは一生解けることはない遺伝子の不思議に頭を悩ませながらも、素直に感謝の気持ちを伝えた。
「全部ほどけました!」
「ああ、助かったよ。さて…」
「では、ぼくは父さんの所に行きます」
君を安全な所へ、という言葉を遮るハクトの言葉。
「いやいやいや、そういうわけには」
「フツキさんは避難してくださいね。それでは」
「ちょっとまっ…あっ」
足のしびれに立ちあがりそこなったフツキを残し、遠ざかるハクト。
「あ~も~っ、いい子なんだけどな!」
正義感の強さは父親譲り…なのか?慌てて体勢を整え、後を追うフツキであった。
続く