◇この日誌は、中島先生作品、JC『蒼天のソウラ』を題材にした二次創作になります。私個人の解釈になりますので、設定と齟齬、キャラクターに違和感等感じる部分もあるかと思いますが、ご了承くださいませ。なお、過去の日誌『旅立つ日』、『マージンの一番長い日』をベースとしておりますので、そちらを先にお読みいただかないと繋がらない部分が多々ございます。ご了承くださいませ。
『ドルブレイブ・アッセンブル!』
「やっぱり、場違いなところに来ちゃったなぁ」
爆弾工作員(ボム・スペシャリスト)マージンの妻にして、ハクトの母であるオーガの女性、ティード。
彼女は今一人、喧騒から離れて壁に背を預け、ショートの金髪を耳にかけ直していた。
戦場暮らしの長かった彼女にとって、華やかな場は苦手である。
だがしかし、せっかくマージンの用意したチケットを無駄にするのも申し訳ない。
そんな思いで、ティードはオーガの女性のみが参加を許される特別な集いにやって来ていた。
普段はタンクトップにマージンとお揃いのズボン、そしてアーミーブーツという、どれだけ贔屓目に見ても女っ気ゼロの衣装に身を包む彼女であるが、今日はシンプルな物ながらも純白のドレスを身にまとっている。
しかし、さすがは選りすぐりのオーガ女史の集う夜会、豪華絢爛なドレスを身にまとい、高貴に振る舞う他の列席者を見ていると、どうしても自身の姿は目劣りしてしまう様に思う。
メギストリス様式の明るい内装の会場もまた、ティードの心に暗い影を落とす。
ちなみに、全大陸から集うメガトン級オーガ爆弾を、ティードの衣装の肩に仕込んだ隠しカメラで撮影するのがマージンの真の目的であった。
がしかし、事前にティードの衣装合わせに同席した際、思わず鼻血を噴き、やましい企みを抱いた己を恥じたほどにティードも絶世に美しいのだが、隣の芝生は青く見える、というやつである。
「貴女も休憩か?」
ふと声の方向に顔を向けると、両頬に2本ずつの揃いのシンプルなラインタトゥーを入れた、燃える勇気のような赤い長髪の女性が立っていた。
ともすれば睨み付けるが如きその毅然とした眼差しは、同じく闘いに身を置くものであることを雄弁に物語っている。
「ええ、どうにも、ここの空気は馴染みが悪くって」
「奇遇だな、実は私もなんだ」
「マーちゃ、いえ、夫のマージンにチケットをもらって、無駄にするのも何だったから…」
「私の方はそうだな、同僚に無理やり、な」
リーダーもたまには息抜きをしないといけない。
正義に休みは無いのが持論だったのだが、今日日、正義にもブラック企業という概念が導入されているらしい。
同僚のブルーとオレンジの戦士に促され、久方ぶりの半休を頂戴してこの場にやってきた。
「ところでご婦人、先ほどマージン殿、とおっしゃったか?」
「堅苦しい話方はしなくていいですよ。ええ、マージンは私の夫です。ご存知?」
ティードと同じく、白を基調としながらも、柔らかさを感じるドレスに身を包んだ赤髪のオーガは、ティードの横に並び同じように壁に背を預ける。
「こちらこそ、もっと砕けて頂いて構わない。ただ、私のこの話し方は性分でね。ご了承いただきたい。マージン殿とは、ともに海底離宮で戦った仲だ」
「ああ、なるほどその時に」
「私もその作戦に、4人の仲間と博士とともに参加していたんだ」
「…ん?4人の仲間と、博士?そしてその赤髪…貴女、もしかして…」
ティードの脳裏に、ハクトとの会話が蘇る。
息子が大好きな、アストルティアを守るヒーローの話。
「ああ、まあ一応は伏せるべきなのだが、マージン殿の奥様であれば構わないだろう。私はセ~クスィ~。そして、超駆動戦隊ドルブレイブ、正義を照らす情熱の炎アカックブレイブとは、私の事だ」
「え~~~っ!!!???」
会場中に響き渡る黄色い声。
ティードは会場中の視線が集まるのも気にも留めず、興奮した表情で、いつのまにやら懐から取り出したサイン色紙とペンをセ~クスィ~に差し出す。
ハクトから話を聞かされるたび、烏滸がましいと思いつつも、同じ戦う女性として憧れと尊敬の念を抱いていた女性が目の前に。
「む、息子が大ファンで!サイン、お願いします!!あ、ハクトくんへって、入れてください!ティードちゃんへとも、添えてください!」
(ここに来てよかった!ありがとうマーちゃん…)
心から夫マージンに感謝するティードであった。
続く