ティードの歓声から遡る事およそ500年前。
元“真の太陽”の戦士団の一員にして、ルシナ村の踊り子、ワッサンボン。
そして、同じく戦士団の出ながら、故あってルシナ村を離れ、5大陸を旅するレオナルド。
その久方ぶりの再開は、激しい戦いに彩られていた。
「気をつけてレオナルド!奴はまた地面に潜った!」
「ああ、分かってる!ガルム!!」
「クゥウン!」
レオナルドの呼びかけに答え、黒い背に赤い四肢の魔狼が躍り出る。
ガルムと呼ばれた狼型モンスターは、ルシナ村の近くでレオナルドに生まれたばかりのところを保護された魔物だ。
今はレオナルドとともに他の同族を探す旅の途中。
ルシナ村を出てはや数ヶ月、その体躯は母にはまだ遠く及ばないまでも、大人と呼べるほどに大きく成長を遂げている。
その優れた嗅覚で、地に潜った敵を探そうというのだ。
「グワゥ!ワウッ!!」
「そこだな!さみだれうち!」
やがてガルムの睨み付けた一角を狙い、4本の矢が舞う。
そのままでは当然地面に阻まれる。
が。
「ジャンピングタイフーン、横薙ぎ!!」
レオナルドの攻撃とクロスするように繰り出されたワッサンボンお得意の扇の大技、ピンクタイフーン。
通常は地面に垂直に、天高く巻上げるように行うそれを、ワッサンボンの驚異的な跳躍と身のしなやかさでもって、大地と平行に回転、さながら掘削機のように、ももいろの旋風が地面をえぐりあげ、敵の青色の鱗が露出する。
矢がまさに命中すると思われた瞬間。
くわっと開かれた3本の指が、矢を絡め取った。
そのままゆらりと、マドハンド系の魔物のように巨大な腕が大地から持ち上がる。
小柄なワッサンボンはおろか、レオナルドすらはるかに凌駕する異様。
久々の強敵に、息を呑むルシナの戦士たちであった。
続く