「なぁアニキ。オレはこんなに早く、再会するつもりはなかったんだが」
「お互い様だ、クソガキ」
かつて、マージンが拘束されユナティから尋問を受けたヴェリナード城地下に位置する留置施設。因縁の二人が、今はテーブルを挟んでお茶をすすっている。
「とっとと吐いてさ、楽になりなよ」
いかにも、めんどくさっ、という気持ちを隠しもせず、机に突っ伏して器用にコップのふちを咥えているマージン。
「今更、お前まで俺を疑ってんのかよっ!全部白状したっつうの!!」
マージンからアニキと呼ばれる男、フィズル。
彼は古代ウルベア地下帝国の流れをくむ超兵器を用いてヴェリナードで破壊活動を行い、マージンとの激闘の末、お縄となった。
マージンとしてもフィズルとしても、自分達で言うのも何だが、ちょっとカッコつけたお別れをしておいて、わずか1年も経たないうちに再会というのは、いささか気恥ずかしいものがある。
それでも鉢合わせることになったのは、とある事情があった。
自身の起こした事件に対し、全面的にヴェリナード王国軍に捜査協力しているフィズルだったが、辻褄が合わない部分が出てきてしまっていたのだ。
そこで古くも新しくも縁のあるマージンが呼ばれ、ここに至る。
「アニキ知ってる?ドルブレイブ」
「おお?…そりゃあまあ、知ってるけども」
フィズルは犯罪に手を染めた身分だ。敵となる可能性のある存在は、下調べをしていた。
「ウチに来るんだよ、ドルブレイブ」
マージンは再びズズーッと、すっかり冷めたお茶をすする。
「お前ついに年貢の納め時なのか?」
間髪入れず、微塵の疑いもなく告げるフィズルに、お茶を吹き零すマージン。
「ゲッホゲホッ、アニキにだけは言われたくないわ!マジでっ!!」
倒れかけたコップを慌てて立て直し、起き上がるマージン。
何度繰り返したか分から無いやり取りをもう一度交わす為に、ポケットから2枚の写真を取り出す。
「アニキをボコッた後にね、海底離宮ってとこで一緒に仕事したのさ、ドルブレイブと。それと別件で、ティードさんがちょっと、知り合いになってね。遊びに来るんだよ、明日から」
「さすがティード、潜入工作の勘は鈍ってないようだな」
「あの、思い出話じゃなくてさ。はぁ…もっかい聞くよアニキ。なんでこんなもん、てか、一体何盗んだの?」
マージンが一枚ずつ写真を並べる。
まず一枚目に写っているのは、何やら古めかしく、上から太い鎖で厳重に封印された宝箱。
そして次の写真は、パックリとそれが割られ、中身が無くなっている様子を写したもの。
「だから知らんて!」
「はぁ…そうかいそうかい。わかったよ」
やれやれ、諦めるようにかぶりを振ると、マージンはフィズルを一人残し、部屋を出るのだった。
続く