「紫色の偽ドルブレイブについては、今俺も追っていた所だ。情報を交換したい。直接…」
マージンと落ち合う段取りをしようとしたその時だった。
ズズン、という地響きとともに通信が途絶。
続けてビーッビーッという鋭い音が響き、赤い回転灯が明滅する。
それが意味するものは…
「接近警報!?」
床からせりあがるモニターに映し出されるのは、紫色に染められたドルブレイブによく似たシルエットが3体。
マシンボード型のドルボード、だがしかしそれに乗るのではなく、両腕にそれぞれ盾の如く一機ずつ握り、空を舞うスーパーヒーローよろしく滑空してくる。
三角の陣形を敷き飛翔する敵小隊。
先陣を切る一体が、空中で身をよじると、左手に装備していたドルボードを槍の如く投擲した。
数秒の間を置き、再度、轟音と振動が基地を襲う。
「さっきのはこれかっ!無茶苦茶してくれる!」
ドルボードがぶつかっただけでは、この爆音と振動は説明がつかない。
さらに言えば、2機を一対に推進しているとはいえ、モニターに映る敵の速度は異常、そして先ほど一機投擲したはずの先頭の敵の左手には、巻戻したかの如く再びドルボードが握られている。
「あれも魔装具、だというのか?」
ドルセリンのエネルギーにより、理論上無限に魔装具を顕現できるドルブレイブの魔装システム。
明らかにそれに順ずる特徴が見て取れる。
「もっと情報が欲しい所だったけど!」
持ち帰った頭部に発信器でも仕込まれていたのか?
はたまた、ヴェリナードからの通信が傍受されたのか。
とにかく、ここまで本格的に攻撃を受けては、この基地にもはや価値はない。機
械仕掛けの生首を投げ捨て、ドルセリンの管を握る。
「ドルセリン!チャージ!!魔・装・展・開!!!」
ネコギシを閃光がつつむ。
「水底に咲き誇…」
ボゴン…ズズン…
「コホン、気を取り直して。水底に咲き誇る…」
バゴン…ドズズズ…
名乗りの最中をお構いなしに爆音と振動が襲う。
「水底に咲き誇る珊瑚のがべッ…」
やけくそ的に3度目の名乗りを上げようとしたダイダイックブレイブの頭部を、崩落してきた天井の欠片が襲った。
ダイダイックブレイブの頭部を上回る大きさの瓦礫の直撃に、思わず蹲る。
全身を包む小刻みな震えは、痛みではなく怒りによるもの。
「仮にもヒーローのナリして様式美って言葉を知らんのかッ!徹底的に教育してくれる!!」
偽物への怒りを爆発させ、エアボード型ドルボードを模した自身の魔装具、ドルダイバーに飛び乗ると、ちょうど先の崩落によりぽっかり空いた天井の穴から、矢の如く飛び出すダイダイックブレイブであった。
続く