今日は書き溜めていた分も含めていろいろ更新します。まずは先日に引き続き、ツイッターで良いネタを頂いたので軽いお話を一つ。『ドルブレイブ・アッセンブル!』にも登場いただいた、マージンさんのマイタウンのコンシェルジュ、フライナさんの持ち込み企画。
『フライナさんの笑ってはいけない絵画教室』
ある日の昼下がり。
「ん~ふふ~、んふふふ~、ん~ん~ふ~ふふ~」
冒険者、マージンの所有するマイタウンの一画。そこに建てられたマージンの爆弾工房に、マージンの妻ティードの姿があった。
その手には背を幾重ものリングで閉じた青い表紙のスケッチブックがのせられており、鼻歌交じりにティードは筆を走らせていく。
どうやら目の前ですやすやと眠っているばくだん岩をスケッチしているらしい。
思い付きで始めた事であったが、周りの音が耳に入らなくなる程度には集中していたティード。
ふと気づけば、夫であるマージンがすぐそばに立っていた。
「お、ティードさんなに描いてるの?」
「わ、びっくりした~。いや、ね、クエストの報酬でスケッチブックを貰ったから、せっかくだし描いてみようかなって。手近なところで、マーちゃんのばくだん岩をね」
「おお。見せて見せて~」
スケッチはほぼほぼ完成している。
筆を収め、マージンに見せるティード。
ティードより少し低いマージンの顔の高さに合わせた事が幸いし、スケッチブックでティードの視界からマージンの顔が隠れる。
「へぇ~、ティードさんが絵をねぇ」
妻であるティードとは、結婚する前からも含めてかなり長い付き合いだが、そういえば絵を描いている所なんて見るのは初めてかもしれない。
報酬で貰ったというが、その紙は年季を感じるうっすらとした黄と茶の中間の色味を帯びており、すでに何十枚と絵が描き込まれているのであろう、ティードが掲げたページはスケッチブック全体の中腹ほどに位置するようだ。
ほんのりと、古紙独特の淡いカビの香りも漂ってくる。
スケッチブック自体をやや不審に思いながらも、ティードの作品に目を向けるマージン。
「んっ、むぐ!!!???」
瞬間、マージンは思わず掌で口元を抑え、高速で思考を回転させる。
先ほどティードは、マージンのばくだん岩を描いたといった。
そして、まさにこの部屋には、ばくだん岩がいる。
ここまではいい。
しかし、そうなると、スケッチされた物体との整合がとれない。
マージンが過去、戯れに作って失敗した目玉焼きのような形状をしているのはなぜだろう。
思わず、この部屋にバブルスライムが紛れ込んでいるのではないかと軽く目を泳がせるが、当然ながらそんなわけもない。
これは一体どういう類の試練の門なのか。
「いや、なかなか、上手い、ね」
背後に回した左手でギュッと自身の尻をつねり上げ、必死に笑いをこらえるマージン。
その全身と足並みを揃えて、堪えた笑いからプルプルと震える唇を動かし、やっとの思いで言葉を絞り出した。
続く