今回はマージンさんのタグとみさをさんの素晴らしいイラストから小話をば
『ドルセリン・ドランカー』
それはまだ、超駆動戦隊ドルブレイブが結成間もなく、体制が不充分だったころのお話。
少ない手札で最高効率をはじき出すべく、おきょう博士は日夜新しいアイテムの開発に勤しんでいた。
これは、そんな中完成した、ある失敗作の物語。
「リラックスした服装で、と言われたが」
「う~ん、何とも味があるスーツだね」
おきょう博士の研究室へ向かう道すがら、セ~クスィ~とネコギシはお互いの服装を憂鬱な顔で見比べる。
セ~クスィ~は赤、ネコギシは橙。
超駆動戦隊ドルブレイブにおけるパーソナルカラーに染められたシンプルなボディスーツには、それぞれ『情熱の炎』、『珊瑚の知恵』と荒々しい書体で一筆書き殴られている。
「結局、指定のスーツがある時点で、リラックスした服装も何もないじゃないか。まあ、別にかまわんが。しかしネコギシ、最近…いや、すまない。何でもない」
「うん?」
竹を割ったような性格をもつドルブレイブのリーダー、セ~クスィ~であるが、今日はどうにも歯切れが悪い。
今日の実験に少し緊張しているのかもしれない。
そして、惚けたふりをしながらも、ネコギシ自身、セ~クスィ~が何を言いかけたのかは、彼女の目線から何となくピンと来ていた。
オーガであるセ~クスィ~が、ドワーフのネコギシに話しかけようとすれば、必然的に目線は下がる。
だがしかし、先ほどのセ~クスィ~の視線は下がりすぎだ。
そう、セ~クスィ~の目線は、ちょうどネコギシのお腹の辺りを刺し貫いていた。
(また少し…育ったか?)
隣を歩くセ~クスィ~に気付かれぬようそっと、反対側の掌で自身の脇腹を触る。
ドルブレイブとして活動するようになってこのかた、とにかくご飯が旨いのだ。
激務の後だからなのかはわからないが、ついつい量が増えてしまって、それはそのまま2倍にも3倍にもなって腹回りに還元されていた。
(トレーニングのメニューを増やすか…)
無機質な廊下を歩きつつ、このところの暴食を反省しているうちに、目的の部屋へと辿り着いた。
「いらっしゃい、二人とも」
出迎えたのは小柄なプクリポの女性。
「お待たせしました、おきょう博士」
そっと指さきでモノクルの縁をなぞるこの女性こそ、ドルブレイブのブレイン、おきょう博士である。
小柄なプクリポと侮ってはならない。
ドルブレイブが用いる特殊環境スーツ、『魔装』の発明・開発はもちろんの事、今いるこの秘密基地の設計、数多のサポートアイテムに至るまで、すべてが彼女の手によるもの。
彼女がドルブレイブを支えていると言っても過言ではない。
「今日は二人に、これを試してみてほしくって」
そういって差し出された2本のアンプルをセ~クスィ~とネコギシはそれぞれ受け取る。
容器自体は彼らが魔装を展開する際、ベルトに打ち込むドルセリンのシリンダーによく似ている気がするが、そこに満たされているのは見慣れたドルセリンではなく、ほんのちょっぴりとろみを持った、鮮やかな透明の液体だった。
「博士、これは一体?」
「先日、連続で任務にあたってもらった事があったわよね?それで思ったの。ドルセリンチャージのついでに、皆に元気もチャージできたらって。名付けて、ドルセリンD(デー)!」
「鷲のマークは何か意味が?」
セ~クスィ~がくるりと見回したアンプルには、金色の鷲のエンブレムが刻まれていた。
ドルブレイブは特にこれといったロゴは設けていないはずだが。
「それは何となくつけてみました。それじゃ、用法容量を守って、正しく実験参加してね」
パチッとウインクしてみせるおきょう博士に促され、少しの不安を感じながらも実験フロアの中央、床に記された立ち位置へとスタンバイする2人であった。
続く