「それでは」
「ああ、私も準備オーケーだ」
「「ドルセリン、チャージ!!!」」
身に付けている味わい深いボディスーツにも、魔装展開の機能は無いものの、簡易ベルトが設けられており、わき腹にあたる部分にドルセリンのシリンダーの接続口がある。
変身の前動作の要領で、掛け声とともにドルセリンDを打ち込んだ2人。
「どうかしら?」
「う~む?これといって、特に何も感じないような?」
「そうですね。俺も特には…って、セ~クスィ~、大丈夫!?」
驚くネコギシの視線の先では、魔装展開後はアカックブレイブを名乗るセ~クスィ~の顔面が、まさにトマトの如く赤っくなっていた。
「む?」
「顔が真っ赤だよ!?」
「言われてみれば…そうだな、ほんのりと体が熱いような」
「ほんのりで済むのそれ!?」
とにかく、椅子か何か、セ~クスィ~を安静にさせた方が良い。そう思い、適当なものがないか辺りを見回すネコギシ。
「そんなことよりだ!」
ドカッという大きい音に驚いて向き直ると、ネコギシのほんのすぐ近くに、膝を立てて胡坐をかく、山賊の如き荒々しい座り方で床に鎮座するセ~クスィ~の姿があった。
「何だこの、油断しきった三段腹は!!!」
「あべしっ!?」
無造作に突き出されたセ~クスィ~の手刀がネコギシの腹部に食い込む。
「こんな腹でアストルティアが救えると思っているのか!?」
「いや、その、俺はどちらかというと頭脳労働担当というか…」
「何か言ったか?」
「あっあたたたっ、やめて、もげるっ!」
そのままむんずとネコギシの霜降り肉をぐいぐいと引き絞る。
「ほら、腹筋をはじめろ!手始めに1000回だ!」
「手始めって回数じゃなくないですか!?」
「口答えするなっ!!」
ぎりぎりと引っ張り続けられていたお肉が張力の限界を超え、セ~クスィ~の指先から逃げ出してバチンとゴムの様に音を立てる。
「サー!イエッサー!」
うっすら涙を浮かべながら腹筋を始めるネコギシ。
「今日中に腹筋を6つに割ってもらうからな!」
「期限が厳しすぎる!」
「さて、おきょう博士」
「ひっ!」
ネコギシが餌食となっている間に、抜き足差し足で研究室をあとにしようとしていたおきょう博士。
「貴女はどうかな?」
「い、いやその、あはは、あっ、あ~れ~…」
海中で獲物に忍び寄るサメバーンの如く、背後から両腕でセ~クスィ~にお腹を鷲掴まれてしまうおきょう博士。
「ふむ?脂肪は少ないな。だが、筋肉も少ない」
「私、運動はちょっと…」
藁にもすがる思いで、セ~クスィ~に懇願のまなざしを向けるおきょう博士。
「大丈夫。一日500回から始めよう」
しかし、無情にもニッコリとほほ笑んだセ~クスィ~によって、ずるずると引き摺られていくのだった。
続く