「おっ、なんだ、いいものがあるじゃないか」
喉が渇いたと、研究室の戸棚をバタバタと開け閉めして物色していたセ~クスィ~はやがて、一つの大瓶を引っ張り出した。
銘酒『オガ殺し』。
セ〜クスィ〜は栓を容易く引き抜くと、グビッと一気に中身をあおる。
「なんで…あんな…ものが…」
腹筋を続けながら、何となく事の顛末が読めてきたネコギシ。
珊瑚の知恵は、さすが伊達ではない。
「テンションが高まった状態と…酔った状態は…近いものがあると思って…ああ…もうダメ…」
先のドルセリンDは、ほろ酔い状態からくる疑似的なテンションバーンを狙ったものだったようだ。
しかし、参考にした成分が宜しくなかったのだろう。
ランドン山脈の湧水で磨かれたかの銘酒は、その名の通り、オーガによく効く。
「しかし、俺もこれは、きっつい!」
隣で目を回しダウンしたおきょう博士に次いで、自身も限界を迎えつつあるネコギシ。
「どうしたネゴギシ!!動きが鈍ってるぞ!」
瓶から直接飲んだりするものだから、セ~クスィ~の酩酊状態はさらにいっそう高まっている。ついには呂律も回らなくなりだした。
「ネコギシですっ!」
「またも口答えかネコギジッ!いい度胸だ。腹筋はもういい!」
むんずと研究室の一画から、アカックブレイブ用に開発が進められている2ふりのハンマー型魔装具を持ち出すセ~クスィ~。
「魔装具、連結!」
軽々と持ち上げた馬鹿みたいに大きいハンマーとハンマーの柄を連結した。
「このバーベルを持ち上げられたら、許してやろう」
そう言われれば形は似ているかもしれないが、断じてそれはバーベルではないし、先ほどからセ~クスィ~は片手で振り回しているものの、無造作に置かれた魔装具の重さで研究室の床はひび割れている。
「いや、見るからに無理…」
「早くしろっ!」
「はいっ!!ふんぬ…ふんぬぐぐぐ…ひでぶっ!」
案の定持ちあがらず、先の腹筋のダメージで手からすっぽ抜け、転がるネコギシ。
「情けない!情けないぞお前たちっ!!!」
セ~クスィ~の怒号が、研究室に響き渡るのだった。
翌朝。
筋肉痛などという生易しい表現では表し切れない激痛に苦しむネコギシとおきょう博士に対し、お約束の如く何も覚えていないセ~クスィ~。
かくして以後、ドルブレイブ秘密基地には厳しい酒類持ち込み禁止令が敷かれたのであった。
~完~