またまたマージンさんのツイートを元に、時系列としては『ドルブレイブ・アッセンブル!』の数日後を描いた物語になります。
『着せ替え狂想曲』
ヴェリナードの蒼空に、大きな声が鳴り響く。
「やっぱシャバの空気サイッコーだぜ!」
周りの空気を爆発させる天才、マージン。
今日も今日とて、ヴェリナード城の秘匿通信室の占拠・無断使用並びにその他諸々の罪状による拘束から、超駆動戦隊ドルブレイブによる状況報告を兼ねた嘆願書と、ディオーレ女王の特赦にて解放してもらった所だった。
地下の澱んだ空気と、毎日三食、カチカチのパンに痩せ細ったシシャモを挟んだだけのシシャモドッグで飢えを凌いだ過酷な日々は、流石のマージンといえども疲弊せざるを得ない。
しかし、先程の溌剌とした歓声とは裏腹に、マージンの足取りが重い事には他に理由がある。
如何に女王の特赦を賜ったとは言え、マージンがヴェリナードを出国する為には、身元請負人の直筆サインが必要なのだ。
普段であれば、マージン曰く相棒のフツキにお願いするところなのだが、先日アイドルグループ『ExtE!』のミニライブ&撮影会に参加した折のサインや写真をしつこいほどに見せびらかした結果、もはや何度目かわからないドラキーメールの着拒設定を受けてしまっており、止むを得ず迎えのお願いの為、妻ティードに連絡をした。
その時の
『マーちゃん?』
の響きは、おぞましいおたけびの如く今尚マージンの足腰をカクカクさせている。
何かしらお詫びの品を、とヴェリナードを物色するマージンの視界に、懐かしい姿が映った。
ショートマントとともに風にたなびくピンク色の手入れの行き届いた長髪、錬金ランプの注ぎ口を延長したような独特の両手杖(キマイラロッド)を携えた、錬成呪文(マホマゼル)の使い手、ブラオバウムだ。
「よぉ、バウムさんじゃないか!お久!」
ブラオバウムもまた、マージンらとともに海底離宮に挑んだ100人の冒険者の一員であった。
「これはこれはマージンさんじゃないですか。お久しぶりです」
「勝手なイメージで申し訳ないけど、今日はどったの?普段は工房に篭っているとばかり…」
「ははは、確かに。でも私もフィールドワークに出る事くらいありますよ。今日は面白い魔法の話を耳にしましてね」
「面白い魔法?」
ピンとマージンの心のアンテナが起立する。何もティードへのお詫びは、物品である必要は無い。愉快な土産話でもいけるはずだ。
「それ是非詳しく!」
「月の暦の終わりがけ、つまりはちょうど今頃、ヴェリナードに30分だけ他の衣装に変身させてくれる魔法を使うプクリポの女史がやってくると聞きましてね。ぜひその魔法を教わりたいと思いまして」
「ほうほう。あ、何かそれ知ってるかも。クポ…じゃないな?ピプでも無くて…」
「リポちゃんじゃないですかね」
「そうそれだ!オレもご一緒していいかな!?」
「勿論ですとも」
二人は等しく期待に胸を膨らませ、ヴェリナードを往くのであった。
続く