「あの弓使いと踊り子、そして吟遊詩人は、忌々しいが実にいい仕事をしてくれたわい」
パチリという音とともに、異臭の元である包みがライトアップされる。
「素晴らしいと思わぬか?その布はな、浄化のたまねぎという特殊なモンスターの素材でできておる。本来であればその名の通り、浄化の力で無臭のはず。ところが、包んだものの禍々しさですっかりと豊潤に香っておる。とはいえ、さすがのシドーの腕も影響を受け、この500年で実に程よい大きさに縮んでくれた」くいっと顎をしゃくり合図を出す老人。いつのまにやらモニター越しではなく、ハクトのすぐそばまでやって来ていたSB-03がコクリとうなずき布を引きちぎると、青黒く変色し、ミイラの如く干からびた腕が姿を現す。変色の進んだ竜のような青の鱗に、3本の指、鮮血の如き赤い爪。ただの腕がまるで心臓を内包するかのように、包みから解き放たれた瞬間から、ドクン、ドクンと脈を打ち始める。
「あとは器じゃ。どうすれば腕に餌とみなされず融合を果たせるのか、手元に残ったわずかな肉片を元に様々なモンスターで実験を繰り返したが、すべて徒労に終わった。ゆえに、お前たちに目を付けたのじゃよ。人とエルフ、エルフとウェディ、ウェディとドワーフ、オーガと人。異なる生物同士の間に、天文学的な確率の果てに生まれた子供達。ワシの睨んだ通り、そこには求める答えが眠っておった」
SB-03はアームライオンの眠る装置の前に立ち、ガコンと音を立て開いたハッチの中にシドーの腕をセットする。ハッチを閉じると今度は、血のような赤い液体の満たされたアンプルを取り出した。
「眠っている間に小僧、お前の血も頂いた。ワシ謹製の融合剤でもって、今まさに、長年の研究が完成する」
SB-03がシドーの腕をセットしたハッチのすぐ横、操作盤に拵えてあるプラグの差し口にアンプルをセットすると、ゴポゴポと音を立ててアームライオンを包む薬液が赤く染まっていく。
「薬液が馴染んだらいよいよじゃ。…むっ!?」
その時、激しい振動と轟音が鳴り響く。
「そろそろだ」
雪原を走る2台のドルブレイド。端末の光点を確認し、ティードに告げる。
「見たところ何もなさそうよ!?」
「悪の巣窟は地下と相場が決まっている。実際、7割くらいだがな」
「入り口を探さなくちゃ」
「いや、時間が惜しい。清く、正しく、強行突破だ。私のドルブレイドは、特注品でな」
セ~クスィ~がドルブレイドのグリップを一際強く引きこむ。彼女の駆るドルブレイドは一気に急加速したのち、ボディ下部より推進剤の青白い光を吹き出し天へと舞い上がった。
「ドルセリン・チャージ!魔装展開!!」
宙にてアカックブレイブへと変身を遂げるセ~クスィ~。先のダイダイックブレイブ同様、普段とは異なる機械的な衣装を多分に含んだ旧式のスーツが展開された。
「正義を照らす情熱の炎!アカックブレイブ!!これより敵地へ罷り通る!!」
ドルブレイドの機首を地面へと向け、さらにはドルブレイドを足がかりに更に空高くへと舞い上がる。
「ダイレクト・エントリーキック!!」
続く