地面へ向け高高度から落下を始めたドルブレイドのボディが90度折り曲り、さながら巨大な脚部の様な形状に変形する。
「はぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
巨人の足を後押しするが如く、変形したドルブレイドの後部へ重力加速度を伴ったキックを見舞う。天使の輪の様な巨大な赤いフレアを幾重にも放出しながら、ドルブレイドはラギ雪原の大地を穿った。そしてそのまま、幾重にも連なる隔壁を打ち抜いていく。
「ハクト君!ハクギン!すまない、待たせたな!!」アカックブレイブは更に地下深くへと突き進むドルブレイドからタン、と足を離し、未だ拘束されたハクトとSB-03の前へと降り立った。そしてモニターに映る老人へ睨み付けるような強いまなざしを向ける。
「すまないなご老人。前途有望な2人の新人スカウトに来た。邪魔するぞ」
「2人?1人の間違いじゃないのか?」
「すっかり耄碌されていらっしゃるか、ご老人。そこにいるだろう」
ピッと突き出した右の腕。人差し指と中指で、ハクトとハクギンを指さすアカックブレイブ。
「はぁ。つくづく笑わせてくれる。はははっ、せっかくだ、趣向を凝らそう!…SB-03、アカックブレイブを殺せ」
「命令を受諾」
機械的な返答の後、アカックブレイブへと駆け出すSB-03。
「ダメだよハクギン!!」
ハクトが必死に呼びかけるが、SB-03は止まらない。真正面からの鋭い正拳を、しかし容易く片手で受け止めるアカックブレイブ。
「まっすぐな良い拳だ。…さて、ハクギン。私は君の過去を聞いた」
アカックブレイブの言葉に、ピクリとSB-03の体が跳ねた。
「やらされた事だった、などという慰めはしない。もう通り過ぎた過去の事だ、などという気休めも言わない」
SB-03の全力の拳を抑えながら、ハクギンの瞳をまっすぐ見据えて語りかける。SB-03は無言のまま手を払うと、一拍の間の後にハイキックを繰り出す。あわや、こめかみに当たろうかという所で、手の甲でそれを受け止めるアカックブレイブ。
「だが、君の優しさを、私は知っている。そんな君だから、きっと後悔している事だろう。深く心が傷付いている事だろう。それでも!今の君には、ひざを折れない、いや、折りたくない理由があるだろう!」
SB-03は少しの間の後、バク転を2度繰り返して距離をとり、そこから一気に距離を詰め、軸足を固定し、凄まじい勢いのキックを連発する。
「そして今の君には力がある。君の過去が何であれ!それが今!君が友の為に立つことをとがめる理由には、なりはしない!その力を、心のままに振るえばいい。君は戦っていいんだ!友の為に!!」
捌ききれないキックの一部を何発もその身に受けながらも、語りかけるのを辞めないアカックブレイブ。
「それでも重すぎるというならば。君の罪を、私が一緒に背負おう。私も一人の、君の友として」
SB-03の猛烈な攻撃による砂煙と、攻撃と防御がぶつかり合う騒音。数十秒は続いた攻防の末、音が止む。砂煙が払われると、いつしかダメージでアカックブレイブへの変身が解け、体の至る所から血を流すセ~クスィ~の姿が現れる。そしてハクギンもまた、ぴたりと動きを止め、セ~クスィ~の火炎のような瞳を見つめていた。
「負けるな!挫けるな!!」
それはまず、自分に言い聞かせるように。
「君の中にも、熱きものがあるはず!!」
そして最後にもう一度、彼に呼びかける。
「さぁ、立ち上がれっ!!!」
続く