「凄いな、ブレイブジュニア。ボクも負けてられない!」
ハクギンブレイブは両腕にマシンドルボードを展開する。それはダイダイックブレイブを襲った偽ドルブレイブと同形状ながら、やはりハクギンブレイブに合わせて銀色を基調としたカラーリングで顕現した。
「ジェットラッシュ!!」
ブレイブジュニアとスイッチして、マシンドルボードの推力を伴ったパンチを無数に浴びせる。それは、いかに魔装を展開していると言えど、機械の体を持つハクギンだから為し得た荒業。普通であれば肩から腕が千切れ飛ぶほどの推力を強引にコントロールするし、ひたすら連撃を浴びせかける。
「アカックブレイブ!あとはお任せします!!」
リーダーに後を託すと、ひときわ低くしゃがみこんだ姿勢からアッパーとともにマシンドルボードを射出した。さしものシドーレオの巨躯も、打ち上げ花火の如く宙へと高く高く舞い上がる。
「引き受けた。手持ちのドルセリン、全てをぶつけよう。ドルセリン、マックスチャージ!!!」
アカックは立て続けに3本のドルセリン管をベルトにチャージする。
「お前の命はあと5秒だ。受け取れ、シドーレオ。必殺!チャージブースト!!アナザーサン!!!」
ダン、と地を蹴るアカックブレイブ。ドルボードを一時的に加速させる技術、チャージブースト。それを魔装に応用し、さらにはチャージしたドルセリンエネルギーをマグマの如く放出させながら、目にも止まらぬ速さでシドーレオにラッシュを仕掛ける。あまりにも身体負担が大きいため、後の完成型魔装には引き継がれなかった、禁断の必殺技。
「凄い…まるでアカックが何人もいるみたいだ…」
見守る3人も、あまりの光景に呆気にとられる。一切の反撃の隙を与えない猛攻。宙を舞うシドーレオを中心に、徒手空拳で攻撃を繰り返すアカックブレイブの残像が、技の名を表す如く灼熱の光球を描いていく。
「ブースト、解除」
短い言葉とともに、瞬間移動して突然現れたかの如く、地に仁王立ちするアカックブレイブ。ドルセリンエネルギー放出の余波で全身から煙をあげながら佇むアカックブレイブの上空で、もう一つの太陽が爆散した。すっかりと黒く焦げ、随分とその体積を小さくした肉の塊がベチャリと地に落ちる。
「馬鹿な…ワシの…ワシの500年の成果が…こんなにあっけなく…」
シドーレオの残骸同様、呆然と膝をつく老人。エネルギーを使い果たした4人もまた、変身が強制解除される。
「今も昔も、悪の栄えた試しはないのだ。ご老人、あなたにはいろいろと聞きたいことが色々とある。大人しくご同行願おうか」
先の技の影響で口元からこぼれる血をビッと親指で拭い、毅然と言い放つセ~クスィ~。もとより地下の戦いのダメージもある。しかしそんなことは微塵も感じさせない、ヒーロー然とした凛々しい姿が雪原に映えるのだった。
続く