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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2021-09-16 00:59:27.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作 『ドルブレイブ・アッセンブル』その57

それ以来、ハクトは今日まで無気力に日々を過ごしている。
「ちょっとハクト!早く準備しなさい!遅れちゃうじゃない!!」
ズカズカと寝室に入ってきたティードにより、ジャッと勢いよくカーテンが引かれる。
「うん…ごめん…」
詫びつつも、しかしあくまでのそのそと身なりを整え、ハクトはティードとともに久々に家の外へ出たのだった。

数時間後、大地の箱舟、さらには馬車を乗り継ぎ、プクランド大陸のとあるイベント会場にハクトとティードの姿はあった。草原に建てられた仮設の大型テントの中では、これから大人気のドルブレイブショーが開演される。
あの日以降、ハクトはドルブレイブの話題を意図して避けていた。乗り気でない感情はごまかせず、少し拗ねたような表情でテントの中を歩くハクトを出迎えたのは、懐かしい人物だった。
「やあハクト君、久しぶりだね」
「セ~クスィ~さん!?お久しぶりです…」
お忍びできているのだろう。黒のタンクトップにジーンズ、つばの大きい白の帽子を目深にかぶり、顔には大きな黒レンズのサングラスをかけている。ステレオタイプの変装衣装がセ~クスィ~の高身長とも相まって、逆にとても目立ってしまっており、客席でヒソヒソと内緒話をする何組かの視線を感じる。
「今日君をここに連れて来てくるようティードにお願いしたのは、私なんだ。さ、ここへ座りたまえ」
「はい」
最前列の特別シート。促されるままに、セ~クスィ~の隣へ座る。
「さぁ、ショーが始まるわよ」
そのまた隣にはティードが腰かけ、何時の間に買いに行ってきたのか、左手にポップコーンのバスケットを抱え、もりもりと口へ運んでいる。フレーバーはオルフェア名物のアクロバットケーキ味。飛び跳ねるような甘い香りがハクトの鼻をくすぐる。
「はいこれ、ハクトの分。セ~クスィ~のは、ウェナソルト味ね」
「…」
「ありがとう、ティード」
セ~クスィ~と対照的に、ハクトは礼も言わず、黙ってポップコーンの詰まったカップを受け取る。セ~クスィ~の前であるというのに、ふてくされて失礼な態度をとってしまっている自分に嫌気がさし、更に鬱々とした気持ちになるハクトを尻目に、テントの中が暗転し照明が一斉にステージへ向けられる。ヒーローショーをBGMがわりに、周りの観客の邪魔にならないよう小さな声で、セ~クスィ~は優しくハクトに話しかけた。
「ハクト君、君があれ以来ずっと、ふさぎ込んでいると聞いてね」
甘すぎるポップコーンを一粒齧り、見上げたセ~クスィ~の横顔は、あの時涙を流していたなど信じられないほどに、いつも通り凛々しかった。
「セ~クスィ~さんは…もう平気…なんですか?」
自分でもとんでもなく失礼な事を言っていることぐらいはわかっている。それでもハクトは、聞かずにはいられなかった。
「…私は今朝も、夢を見た。私は無敵のヒーローで、ハクギンやティードや、ハクト君の力を借りずに一人で問題を解決し、皆でまた、食卓を囲み笑っている。…そんな、哀しい夢だ」
セ~クスィ~もまたハクトと同様、あの事件を悔やみ、引き摺っているのだ。それでも、どうしてそんなに、凛々しくあるのだろうか。その理由を知ったからとて、同じことを自分ができるだろうか。きっと無理に違いない。それでも、ハクトは知りたいと思った。
「私は弱い。ハクギンだけじゃない。これまで…数えきれない命を、この手からとりこぼしてしまった。だから、死ぬ気で鍛える。次は必ず助ける為に。今も昔も、これからも…私には、たったそれだけのことしかできない」
ああ…。平然としているなんてとんでもない事を言ってしまった。この人は、誰よりも、涙を流し続けているんだ。涙を隠すための毅然とした表情が、仮面の如くこびりついてしまう程に、途方もなく長い間。ハクトは自分の言葉を深く後悔した。
                                続く
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