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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2021-10-08 00:08:41.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『幻列車の浪漫』その11

「おおおお~~~っ、飛んでる飛んでる!」
ロマンはスワンカスタムの操縦席でグリップを握り締めながら歓声をあげた。

賢者ホーローの見立て通り、破邪舟の部品を核とし、テルルを通して数多のアストルティアの民の想いを吸収したスワンボートは、セイロンの術によってロマンやマージンと同様、魂の姿となってその翼を大きく広げた。

しかしゆっくりと感慨に耽る間も無く、汽笛が耳を打つ。

「本当に空を大地の箱舟が飛んでやがる…」
今の状態になって初めて、ロマンとマージンの瞳にも幽霊列車の姿がはっきりと見えた。
空には敷かれたレールなど無い。
上下左右にのたうつ不規則な挙動で、列車はスワンカスタムに接近してくる。
すんでの所で舵をきり、かすめるぐらいの距離で幽霊列車とすれ違う。

突入するなら、最後尾。

「よし、行くぞマージン!」
「応ともよ!」
ドルボード設計の要領で、アクセルと定めて作ったペダルを踏み込む。
「おっ…!?」
確かにスワンカスタムは加速したものの、ロマンのイメージした勢いが出ない。
「大棟梁、どんどん引き離されてるぞ!」
「分かってる!でも何だ…?機体が、重いっ!」
操縦桿が強く左へ引かれる感覚。
「マージン!何かおかしい!ちょっと左側確認してくれ!」
「左?っとぉ!テルルさんにマユミちゃん!?」
「何だってぇ!?」

機体が重たく、速度が出ないのも無理はない。
スワンカスタムの左の翼の端っこに、片腕で何とかしがみつくアイドルと、その襟を掴み、少しでもテルルを持ち上げようとする妖精の姿があったのだ。

「スワンカスタムは二人乗り!定員オーバーだ!マージン、とにかく何とか二人をボディに寄せろ!」
どおりで速度が出ないと分かった所で、戦友を振り落とす訳にもいかない。
「テルルちゃん、掴まってくれっ!」
マージンは自分を縛っていたロープの端をテルルへ投げる。
衣服と同様に、身に付けていたため持ち込めたのは実に僥倖だった。

「よし、引っ張るぞ!」
テルルがしっかりとロープを腕に巻き付け握り締めたのを確認し、マージンは強くロープを引く。

「よし、あともう少…ぶへっ!?」
テルルの腕を掴もうとした瞬間、鋭いアッパーが炸裂した。

「いくら顔馴染みでも許さないんだから!スワンちゃんをこんなにして!!だいたい何でスワンちゃん飛んでるわけ!?」
「こ、これには深い訳が…」
「訳も何もあるかぁ!」
狭い船上、釈明しようとするマージンにヘッドロックをかけるテルル。

「私も怒ってんだからね!毎日毎日騒音立てて!おかげでお店が閑古鳥の群れに襲われてるのよ!?ど~してくれるわけ!?ど~してくれるわけ!?」
「ちょっ、暴れないで、危なっ!」
マユミはマユミで、アズランにて店を開く寡黙なオーガの友人を勝手に代理して、眼前をビュンビュン飛び回りながらロマンに苦情をぶつける。

狭いスワンカスタムの内部はまさに混沌の様相を呈していた。

「テルルちゃん!?テルルちゃん!?」
一方地上では、上半身を土まみれのまま、何とか這い出したフツキが慌てていた。

地上に残されたスワンカスタムの本体。
その船内でロマンとマージンは白目を向き、ぽかんと口を開けている。
そしてテルルもまた、セイロンが術を発動する刹那、愛しのスワンちゃんのもとまでギリギリ辿り着き、その左翼に触れていたのだ。
フツキが抱き起こし必死に声をかけるが、目覚める気配はなく、ロマンやマージン同様、その呼吸は止まっている。

「…不味いことになってる」
アズラン上空の虚空を睨むセイロン。
そこで乱気流に揉まれるが如く、激しく乱高下するスワンカスタムの姿はフツキには見えない。

「セイロンちゃん、テルルちゃんは大丈夫なのか!?」
「スワンボートに触れてしまったから術に巻き込まれただけ。今のところは問題ありません。それと、先程の…妖精さんもお知り合いで?」
「ああ、マユミちゃんか。彼女も海底離宮に共に挑んだ仲間だよ」
「なにぶん、妖精と関わるのは初めてなもので。マユミさんは身体ごと運ばれてしまったようです」
セイロンの目線の先。
激しくふらつくスワンカスタムの周囲にチラチラと、光の軌跡が見え隠れする。

妖精族は五つの種族とはまた異なる存在、もともと霊的な素養が強いが故の現象かも知れない。
セイロンは頭の片隅に事例として留めおく。

「もはやあなた方に賭けるしかないのです。頼みますよ…」
直前のドタバタから、船内がフレンドリーな状況でないことは言うまでもなくわかる。
それでも託すしかない。
セイロンは祈る気持ちで、ふらつくスワンカスタムを見つめ続けた。
                                                                 続く
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