「きゃあああっ………!!」
スワンカスタムが幽霊列車の最後尾に激突した衝撃で、機体から放り出されたロマンとテルル。
一瞬の浮遊感ののち、お手本の様な放物線を描く二人の眼前に、幽霊列車の屋根が迫る。
しかし身構えた激突の衝撃は無く、まるで布を裂くような手応えと共に二人は屋根を突き破った。
そこは列車の中のはず。
しかし二人が落着した先は、何処までも続いているような、果ての見えぬ草原の中。
自分を庇い、着地の際の下敷きになった為か、気絶しているロマンをそっと横たえ、辺りを見回すテルル。
するとおよそこの場には似つかわしくない、殴り合いの喧騒が聞こえてくるのだった。
「何あの量!?」
さほど離れていない距離に、おびただしい数のゆめにゅうどうの群れを見つけた。
そして途方もない数のモンスターを前に、ひるまず闘い続ける人影が一つ。
「あれは…ドルブレイブ、なのかしら…?」
ゆめにゅうどう達を徒手空拳でちぎっては投げちぎっては投げ捌いている戦士は、超駆動戦隊ドルブレイブのメンバーが用いている『魔装』に身を包んでいるように見える。
しかし、海底離宮で共に戦ったドルブレイブのメンバーの中に、白銀の戦士は居なかったはずだ。
テルルが見ている中だけでも三体目のゆめにゅうどうを蹴り飛ばしつつ、白銀のドルブレイブが叫ぶ。
「そこの方!危ないですから下がってて!こいつらは僕が何とかしますから!」
そうはいえども、彼からはヘルメット越しでも隠せぬ疲労の色がテルルにもうかがい知れる。
そして声色と低めの身長。
どうやら彼はまだ年端も行かない子供のようだ。
甘んじてじっとしていられるようなテルルではない。
「ん、んん~…うん!ちょうどいい感じに喉も仕上がってるわ。それに私今、とっても歌いたい気分!」
袖口から取り出したマイクを構え、テルルの喉が奏で出したるは、ExtEの定番ナンバー、『Love Song探して』。
テルルは壮麗な歌声を響かせながら、華麗なステップを踏んで白銀のドルブレイブのもとへ急ぐ。
道中並居るゆめにゅうどうの攻撃すら、まるで組み込まれていたかのように自然な踊りで難無く舞いかわし、ピタリと白銀のドルブレイブに背中を合わせた。
「さぁ、私が応援するから、どんどんやっちゃって!!」
「何だ?力が湧いてくる…!いくらでも戦えそうだ!ありがとうございます!!」
これまで登った数え切れないステージ。
その経験が、テルルの体を突き動かす。
完全にアドリブで、白銀のドルブレイブの攻撃を妨げぬよう息を合わせながら、ぐるりと巡るように互いのポジションを替えつつ、二人は周りのゆめにゅうどうを薙ぎ払っていく。
「あと、少し!」
目に見えて数を減らしつつあるゆめにゅうどう。
終わりが見えてきた。
しかしここへ来て、形勢の不利を悟ったゆめにゅうどう達は、屋根を突き破り落着したまま倒れているロマンへ狙いを切り替える。
「まずい!連れて行かれてしまう!」
焦る白銀のドルブレイブ。
ロマンのもとへ駆け寄ろうとするも、数を減らしたとはいえ未だ大群、足止めと襲撃、役割に応じ二手に別れたゆめにゅうどうたちに阻まれる。
「大棟梁!早く、起きなさ~い!!」
行く手を阻まれ、テルルに唯一取れる手段は、せめて大声で呼びかけるのみであった。
続く