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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2021-10-12 21:26:12.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『遥かなる旅路 ~クイニーアマンをもとめて~』その1

ある昼下がりのマージン邸。
「何か美味しそうなもの食べてるねお二人さん!?」
クエストを終え帰宅したマージンは、窓から射し込む陽光を受けて艶やかに煌めく琥珀色のパン菓子、ちょうどその最後の一欠片が妻ティードの口へと姿を消す所を目撃した。

「あ、父さんお帰り」
ティードの対面のソファに腰掛けていた息子ハクトが、優雅な所作で紅茶のカップを片手に振り返る。

その口許には、さぞ小気味よい歯応えを醸し出したであろうパイ生地の細かい欠片が付着しており、加えてテーブル上の、同じパイ生地の残滓が残る空っぽの皿は、ハクトがティードと同じものを既に完食した後であることを物語っている。

パリパリ、モグ、サクサク、モグ、パリサク、モグ、ごっくん。
「お帰りマーちゃん。早かったね。お疲れ様」
うっとりとした表情で最後の一口をたっぷり時間をかけてゆっくり味わい嚥下したのち、ティードはマージンに労いの言葉をかけた。

「今日はおやつに、グレンのパン屋、『ロゥソン』でクイニーアマンを買ってきたのよ」

そしてハクト共々、口に湯気のたつ紅茶を一口含み、未だ舌に居座る、少しのほろ苦さを孕むカラメルの上品な甘さの残り香を、紅茶に添えて呑み込んだ。

「「ふぅ…」」
食後のその吐息すら、飴色の輝きを孕んで見えるのはマージンが空腹ゆえか、はたまた、数多の美食家を唸らせる、クイニーアマンの怪しい魅力ゆえか。

家族の胃袋へと姿を消したクイニーアマン。
しかし未だ未練の如くリビングに残る発酵バターの濃厚な香りがマージンの食欲の扉を情熱的にピンポンダッシュした。

「ちょっとグレン行ってくるわ!!」
バタンと開きかけの扉を閉め、ティードとハクトが止める間もなく、マージンは駆け出したのであった。

住宅街のゲートをくぐり、グレンへ。
もはや見慣れたグレンの街並みすら、クイニーアマンが待っていると思うと、マージンの瞳にはバターの黄金の輝きを放って見える。

王城へと続く階段を登り切れば、目指すロゥソンは目と鼻の先。

いっそスキップで登ろうか、スーパーハイテンションなマージンの瞳にふと、階段の脇でしゃがみこみ、膝をさする老婆の姿がうつった。

「大丈夫?」
多少の回り道をした所で、クイニーアマンは逃げも隠れもしない。
「ああ、家に帰る所なんだけど、今日は気圧が低いのかねぇ、膝が痛くて痛くて…。もう少し休んでいくから、大丈夫。心配かけたねぇ」
老婆の言葉とは裏腹に、だいぶその表情は辛そうだ。「そいつは大変だ。家まで送ってあげるよ」

そうしてマージンは老婆を背負い、住宅街へとトンボ返り。
老婆の息子から浴びる様な感謝と賞賛の言葉を受け取る。

「本当にありがとうございます!何とお礼をすれば良いか…。そうだ、是非お茶でも一杯…」
「いえ結構!ロゥソンのクイニーアマンが俺を待ってますので!!」

早々に謝辞を切り上げさせると、今度は本当にスキップでグレン城下町、ロゥソンへと続く道を駆け抜けたのだった。

「店主!飛び切り活きのいい、旬のクイニーアマンを一つ!」
「あぁ、すまないねぇ。ちょうど最後の一個が売り切れた所だよ」
「ガッデム!!!?」
クイニーアマンは逃げも隠れもしない。
しかし、売り切れはする。

至って単純な真理を見落としていた自分を深く責めるマージンであったが、さりとて冒険者のはしくれ、老婆を助けた事に後悔は無い。

「店主、また明日、今度は朝一に来るわ…」
真っ白に燃え尽きたマージンに、さらに追い打ちをかける悲しい現実が。

「すまないねぇ、実は先日ようやく就航したグランドタイタス号の輸入便で手に入れた、メルサンディ産の小麦粉を使っていてねぇ。とりあえず次の入荷が来るまで作れないんだよ、今日の分で最後なんだ」
「ファッキン!?」

「でももしかしたら、うちの支店、獅子門の出張販売所なら残ってるかも」
「獅子門の支店ね!サンキューマスター!とりあえず燃料がわりにそこのクリームパン頂いてくわ!」
「あいよ、毎度ありがとねっ」
「待ってろ俺のクイニーアマン!うおおおぉぉぉ!!」

投げ交すような勢いで銭のやり取りを終え、クリームパンを咥えグレンを飛び出し、ドルレーサーに跨ったマージンであった。
                                            続く
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