「あ、あのっ!!」
白銀色のドルブレイブにテルル、そしてロマンが加わり、ほどなくしてゆめにゅうどうの群れが一掃された途端である。
「どうやって目を覚ますことができたんですか!?」
それこそ襟首を掴みあげる勢いで白銀色のドルブレイブに詰め寄られ、ロマンはたじろいだ。
「えっ…と…んん?そうは言われても…」
目覚めた端はまだ、おぼろげに夢の内容を覚えていたような気もするが、ハンマーとノコギリエイソードを振り回している間に、その記憶は今やまさしく夢うつつの彼方である。
そんなロマンの困惑を、白銀色のドルブレイブは別の意味合いに捉え、そこへようやく追いついた理性が自身の行動の不躾さを責めたてる。
「あっ、申し訳ありません!」
ヘルメットが地面にぶつかりそうな勢いで頭を下げると、白銀色のドルブレイブは魔装を解除した。
「申し遅れました、僕はハクギンといいます。加勢して頂き、ありがとうございました」
わずかな閃光とともに解除された魔装の中から現れたのは、名と等しく白銀の髪を短くまとた、声と身の丈に違わぬ少年の姿。
尖った耳は外観年齢が若く見えるエルフであることを物語ってはいるが、先の慌てふためく様、そして丁寧ながらも初々しさの残る立ち居振る舞いから、テルルが思った通り、まだ大人には程遠い事が伝わってくる。
「加えて、突然のご無礼、申し訳ありませんでした」
「いいって、いいって。一緒に肩並べて戦ったんだ。そういう固っ苦しいのはナシ。無礼講といこうや」
「ありがとうございます」
分かったのか分かっていないのか、またもや丁寧にお辞儀をするハクギンに苦笑を浮かべるロマン。
「それで、目が覚めた理由、なぁ?」
とにかく目が覚めたのだから、そこに理由など聞かれても困ったものである。
とにかく、顎に手をそえ、首を傾け考えてみる。
「しかしなぁ…う~ん…そうだな、強いて言うなら…」
何だかとにかく恥ずかしく、頭にきて、それでいて懐かしい夢を見た気がする。
その最中で…。
「テルルさんの歌声が聞こえたんだよなぁ」
本来であればあの日あの時聴こえないはずのテルルの歌声が、ロマンの意識を引きずり戻した。
「う~ん、まあさっきのナンバーなら、テンションバーンかけてるし、子守唄にはならないわね…。とはいえ、改良の余地有りか…」
何となく騒音扱いされたような気がしてムッとするテルルだったが、それも止むなしかと受け入れ、腕を組んで思案に入る。
早速次回の戦闘(パフォーマンス)に向けてのアレンジに余念がない。
「歌…歌か…」
「今一つ、ピンと来ないんだが。それって大事な事なのか?」
「はい。まず、今の状況をかいつまんでご説明します」
草原に正座すると、講談師の如く説明を始めるハクギンであった。
続く