「そっかそっか〜!そりゃ積もる話もあるよね!?ほらあっちの方のちょっと小高い辺りなんか、座ってお話するのに最適じゃない!?」
「えっ、ああ、うん?でも大丈夫かしら?」
「大丈夫!大丈夫!しばらくはモンスターも来ないって!これだけメンツも揃ってるし!ね!?」
マユミは振り向きざま、話を合わせろとばかりにバチコンと露骨なウィンクをロマンとマージンに送る。
「ああ、うん?」
「そうだな。ちょっと一休みしたって、大丈夫だろう」
戸惑いながらも、まあ特に妨げる理由もない。
話を合わせる二人。
「ごゆっくり〜!!」
満面の笑顔を浮かべてブンブン両手を振ってソワレとテルルを強引に見送るマユミ。
必然的に妹のソワレと手を繋いでいるアジロに、保護者的立場故かハクギンもついていった。
後ろ姿が程よく遠ざかったあたりで、コロコロと今度は鬼の形相に切り換わったマユミがロマンとマージンの耳を引く。
「…ちょっとあんた達。テルルちゃんにどう説明する気!?」
「いたたたっ!?どうって…まあ成り行きで致し方ないし、このままテルルさんにもクエストに協力を…」
「そうじゃない!あの子達のことよ!」
正直マユミ自身も、今この場所がどういう場所なのかはわかっているが、肝心のロマンとマージンの目的は知らない。
だがそれを知るよりも先に、何よりも優先して確認するべき事がある。
「ん?」
「…やっぱ、そうだよなぁ」
きょとんとするマージンと対象的に、事前にセイロンからある説明を受けているロマンは暗い気持ちを吐き出すように呟いた。
「どゆこと?」
「マージン。この場所は、あの世とこの世の狭間だって話はしたな?」
「あっ…!」
そこまで聞けば、みなまで言わずとも。
それでもマユミは言葉を継いだ。
「…あの子達はもう、死んでいるのよ。仮死状態のあんた達とはちがって、それはもう、完全に…」
完全に。
つまりは、ザオ系統の呪文や占い師の秘術をもってしても手遅れな、完膚なきまでに。
「あのハクギンって子は…幽体のまま彷徨いでもしたのかしら?なんだか掴みづらいけど、死後2、30年?さっきからマージンの頭に噛み付いてるおじいちゃんはざっと…死後500年ってとこかしら?それに比べれば、あのちびっ子たちはごく最近だけど、それでも1ヶ月以上は経っているわね…」
今、ロマン達の対峙している4人は、もう異なる道行を歩む者たちなのだ。
続く