「オレは爆弾馬鹿だからな。難しい事はわっかんねぇけど。生きてるとか死んでるとか、関係ねぇよ!今目の前に、泣いてる奴がいる。泣かせたクソ野郎も目の前にいる。だったら…やらない理由は、無いだろうが!!」
だったら、やらない理由はない。
ハクギンブレイブの中で、マージンと、友の言葉が重なった。
(そうか…名前を聞いて、もしかしてと思っていたけど…やっぱり貴方は)
「爆弾工作員を、なめるなよ!」
マージンはゴーグルのサイドのスライドボタンを下げ、閃光から瞳を防護する為のシャッターを降ろす。
しかしギンガムマフラーを引き上げず、耳を晒したまま、何と自分の足元に爆弾を投下した。
ドキィィィンと、殺傷ではなく閃光と音による対象の無力化を目的としたスタングレネードの独特な炸裂音が鳴り響く。
「これで子守唄なんて関係ねぇ!」
許容を超える凄まじい音量にシェイクされ、マージンの耳が馬鹿になる。
三半規管への影響も、言わずもがなである。
ふらついた足取りで無理矢理にギガントナイトメーアへ躙り寄るマージン。
「生粋の馬鹿か!?あたしの子守唄は催眠の波動。耳など関係ない!フッ…言っても聴こえんか。馬鹿は大人しく眠っていろ!」
ギガントナイトメーアがガバリと口を開け、もはや呪い歌と化した伝承のメロディを奏でる。
「!…ねむ、くねぇ!!」
痛めた鼓膜では聞く由もないが、ギガントナイトメーアの言葉の通り、強烈な眠気に襲われるマージン。
しかし歩みは止まらない。
「何故眠らない…?…ッ!貴様、正気か!?」
マージンは抜き放った短剣を太腿に突き立て、しかしそれでもなお襲い来る眠気に必死に抗っている。
破れかぶれにしか見えない行動。
しかしマージンには、確かめるまでもない、確かな勝算があった。
膝を折るのは一時のこと。
仲間たちは必ず、立ち上がる。
それまでの時間稼ぎもできないで、何が爆弾工作員(ボムスペシャリスト)だ!
そして、マージンの戦いは、見事実を結ぶ。
「へへっ…ほらな」
眠気を堪え、痛みに耐え、もはやこの上ない形相に、更に笑みが加わった。
続く