「はぁ!?一体そんなもんこの場所に創ってどうすんだよ!?」
テルルの要望を聞き、素っ頓狂な声を上げるロマン。
「いいから!できるの!?できないの!?」
「いや、それくらいならまぁ何とかなるが…」
今の体力、気力、ドルセリオンブロスやえぐみレプリカを構築した際の疲労具合から、冷静に見積もれば、テルルの要望に応えることは何とか可能だ。
だがそれを創ったからといって、何がどうなるのだろうかという疑問。
しかし、受けた仕事はきっちりこなす。
ロマンは疑問を一度棚に上げ、その先を考える。
巨大な敵を前に、テルルの依頼の品を作り、それをどのように防衛するか。
ドルセリオンブロス、そしてえぐみレプリカを損傷した状況下で、どのように…。
「…これだっ!!!」
ロマンに天啓が訪れたのは、今まさに、この追い詰められた状況が故だった。
「とにかく皆、何でもいい!時間を稼いでくれ!!」
ロマンは叫ぶと、神に祈りをささげるが如くガッチリと手を握り合わせ、目もとにしわが深く深く入るほどにきつく目を閉じた。
「今度こそ、根こそぎ吹き飛ばして、その魂を啜ってやろうねぇ。くふふ」
敵は身動きの取れない相手に容赦をしてくれるほど甘くはない。
射出後閉じられていた腹部のドアを再び開き、怨念をチャージし始めるトレインアーマードナイトメーア。
「やっべぇ!またアレが来る!!どうする?どうするよ!?」
慌てふためくマージンだが、さりとて手が浮かぶわけもない。
「動け、動いてくれ、ドルセリオン!」
ハクギンブレイブが叫ぶも、脚部を失い、そこかしこから火花を散らすドルセリオンブロスは、身動きが取れない。
「ここはもういっちょボムセリオンの出番なのか!?やっちゃう!?やっちゃうよ!?やりますっ!?」
「いやあんなもん100体あったって役に立たないっつうの!」
マージンとマユミが漫才を繰り広げている間にも、どんどんとあたりを照らす紫紺の光が色を濃くしていく。
「ふう、やれやれ…。賑やかな連中だ。昔を思い出す。…時間を稼げばいいんじゃな?」
もはや高射台としての役割を為さなくなったドルセリオンブロスから降り立ち、集束天邪鬼砲の射線上へと歩み出るレオナルド。
「爺さん!危ないから下がるんだ!」
「誰が爺じゃ!!レオナルドと呼べ!…ふぅ。まあいい、手伝ってやれるのはここまでだ。その後は任せたぞ」
慌てて呼び止めるマージンに、背を向けたまま別れを告げるレオナルド。
イメージの具現化。
理屈はやはり、いまいちピンと来ないが、何がどうなるかはさんざん見て知った。
「技の名前は…そうだな、蒼天の追想弓とでも名付けようか…」
例え死した後であろうと、絶体絶命のピンチを前に、滾る気持ちは変わらない。
立ち塞がるたった一人の老人など、何を気にするものぞ。
「今度こそおしまいだよ!収束天邪鬼砲!」
レオナルドの存在をまるで意に介さず、再びトレインアーマードナイトメーアから放たれる紫紺の閃光。
眼前に迫る、触れれば消滅必至の攻撃を前にして、老兵は至って冷静に弓を構えるのだった。
続く