お話の時系列として、次回作「逃亡者マージン」の後の物語となります。
一部セリフ等の端々に違和感の出る部分もあるかと思いますがご了承くださいませ。
永遠の地下迷宮から北西の海岸、ルシナ村からほど近い岩壁。
眼下にひろがる大海原を睨むように見据え、堂々と佇むオーガ女性が一人。
薄茶色の革のジャケット、濃い藍色のダメージジーンズで身を包んだ、超駆動戦隊ドルブレイブリーダー、セ~クスィ~は一人、ここへやってきた理由を振り返っていた。
「…ギガボンバー漁?」
爆弾と漁業。
超駆動戦隊ドルブレイブのブレインであるおきょう博士の口から飛び出した、一見、結び付きそうにない組み合わせの言葉に、セ~クスィ~は小首を傾げる。
「その音から別名、ボカチン漁とも呼ばれ、まあそのものズバリ、海中でギガボンバーを爆発させて、浮いてきた魚を捕える漁なの」
「そんな荒っぽい手法があるのか」
「爆発の効果範囲は勿論、水中を伝播する爆音で魚を気絶させて、それはそれは効率の良い手法ではあるのだけれど…」
一般的な網による漁に比べて、それは理に適いとても魅力的に感じる。
だがしかし、同時にはらむ問題点に関しては、ギガボンバー漁という言葉を初めて耳にしたセ~クスィ~であろうと、言われずとも察することができた。
「環境破壊、か」
「さすがね、その通りよ。ギガボンバー漁は稚魚や、食用に適さない魚、とにかく辺り一帯、根こそぎ命を奪ってしまう。そして爆心に近い魚は微塵に散乱して回収は困難、血の匂いに惹かれて本来生息していない大型の海洋モンスターを呼び寄せる可能性もあるわ」おきょう博士の説明を噛み締めるように頷きながら聴くセ~クスィ~。
「故に、昨シーズンからウェナ諸島近海では原則禁止になったのだけれど、禁止海域ギリギリの際を狙って、ギガボンバー漁を行っている悪質なパーティーが居て…」
「ほう。それは勿論許すまじだが、しかしヴェリナードの沿岸警備隊も優秀な強者揃い。我々が協力する必要があるのだろうか?」
悪者を取り締まる事は本望である。
しかし世の中には煩わしいしがらみというものもあり、そして何より、言葉の通り、水上でヴェリナードの精鋭が遅れをとるとは思えなかった。
「そこは少し、センシティブな問題があるのよ…。まあ、これを見てもらえば、わかると思うわ」
おきょう博士は回転椅子を重心移動で器用に回してセ~クスィ~に背を向け、タン、タンと小気味良い音を立ててキーボードを叩く。
「ヴェリナードの沿岸警備隊から送られてきた一味の写真がこちらよ」
おきょう博士の操作で、モニターの映像が切り替わる。
一瞥してセ~クスィ~は眉をしかめた。
「なるほど、確かにこいつらは、沿岸警備隊の手に余る。…とにかく今回はこの、ボカチン漁を行っているバカチン共を何とかしろという事だな」
軽い目眩を覚えたセ~クスィ~の目線の先。
モニターに映し出されているのは、船首から船尾まで続いてしまいそうな、とにかく長々とカタカナの船名が金属プレートで刻印された小型艇。
そしてその甲板の上には、何の配慮か顔面にモザイクが施された二人組、ツンツンヘアーの黒髪の大棟梁と、ギンガムマフラーをめかし込んだ爆弾工作員が、『大漁』と金糸で刺繍の入った大きな旗を振り回し、モザイク越しでもわかる高笑いをあげているのだった。 続く