「良い御仁だったな」
縁を胸に、元気を取り戻した相棒と共にセ~クスィ~は再びチョッピ荒野をひた走る。
おきょうの話によれば、荒野の休息所からメギストリス王国への途上、一つと半刻ほどドルボードを走らせれば、小さいが宿もある集落にたどり着けるらしい。
今日の目的地はそこに決めた。
「しかし、何の用だったのだろうな…」
砂塵を巻上げ進む最中、セ~クスィ~はふと、別れた後、おきょうの後ろ姿は閉鎖されているはずのアラモンド鉱山の方へと向かっていたことを思い出す。
「いかんいかん。無用な詮索はするまい」
おきょうの人柄は、自らが見て知った。
であればこれは無粋というものだ。
やがて砂の香りがすっかり身に沁みついてきた頃、セ~クスィ~は、巨大な一本のヤシの木を中心に、オレンジの生地に紫で模様の刺しゅうされたエキゾチックなテントが立ち並ぶ集落へと辿り着く。
荒野の只中ということもあり、他に産業もないのだろう。
ドルブレイドの駆動音を聞き付けたのか、一際大きなテントから、宿屋の主と思しき恰幅の良い女性が勢いよく飛び出して走り寄り、セ~クスィ~を出迎える。
「やぁやぁ旅のお方、もうすぐ日も暮れる。今日はこの村に泊まっていくだろう?お食事もどうだい?自慢の郷土料理でもてなすよ?」
着物ともまた異なる、体に巻きつけるような形式のフードつきの装束。
テントを形作る布地と近い生地ながら、黄土色を基調に金糸の刺繍の入った女将の衣服はとても豪奢で、セ~クスィ~の目を引いた。
「うむ、頂こう。ドルボードを係留しておける場所はあるかな?」
「もちろんさ!さぁさぁ、いらっしゃい!!」
女将は宿泊に晩と朝の二食付きという宿屋の料金形態から、この集落の生い立ちまで、宿へと続くわずかな道中で余すことなく語りきった。
セ~クスィ~は、軽快な話口もさることながら、短時間で綺麗にまとめ、それでいて、こなれた感じを出さず、あくまでもフレンドリーな女将の話術に感嘆する。
「喉も乾いてるだろ?まずはグイッといっとくれ。あ、水は別料金って言ったけど、こいつはサービス、ウェルカムドリンクってやつだよ」
女将は宿の入り口をくぐるなり、横手の保冷ボックスからキンキンに冷えた緑色の瓶を取り出すと、手際よくシュポンと栓を抜き、セ~クスィ~に勧めるのだった。
続く