「…ッ!!ダメっ…!?」
しかし、無情にも昨夜と同じく一瞬の閃光の後、ベルトはおきょうを拒絶するように爆発を起こし、吹き飛んだ。
放物線を描き、ベルトが向かった先は、奇しくもセ~クスィ~のすぐ近く。
ベルトが自分のもとへと近づいてくる様が、セ~クスィ~にはスローモーションを見ているが如く、とても長い時間に感じられた。
砂の上で2度、3度とバウンドしたベルトを、ガチャコッコ達が突進してくる前に引っ掴み、そのまま近場の瓦礫の後ろに逃げ込む。
轟音を上げて通り過ぎるガチャコッコの群れ。
瓦礫を盾に何とか凌いだが、頼りの瓦礫はガチャコッコの猛烈な体当たりを何度も受け、脆くも瓦解する。
ガチャコッコ達は闇夜で大きく旋回し、再度、盾を失ったセ~クスィ~へと狙いを定める。
セ~クスィ~は危機的状況にありながら、どこか俯瞰するような落ち着いた心持だった。
ベルトのバックル部分を腰に据えると、あるべき場所に収まるが如く、ベルトは腰に巻きつく。
そしてセ~クスィ~は、昨日と今日の2度、目にしたおきょうの行動を思い出す。
「ええと、こう、だったか?…ドルセリン!チャージ!!」
ドルブレイドで散々見慣れたドルセリン注入口と同じ形状のプラグに、自身のドルブレイド用に持ち歩いていたドルセリン管を勢いよく叩きこむ。
有り余る燃料を注入され、待機状態に至ったベルトが淡く輝きを放ち始めた。
変身失敗の爆発の衝撃で軽く意識を喪失していたおきょうだが、ベルトの放つ淡い光で意識を取り戻し、目の前の光景に愕然とする。
「セ~クスィ~さん!!絶対ダメ!今すぐベルトを外しなさい!!お願いだから!!!」
砂にまみれながらも必死に叫ぶおきょうの制止を無視し、セ~クスィ~はためらいなく、ベルトの機能を解き放った。
「魔装展開ッ!!」
装着者の音声コードを受領し、バックル中央のスライムエンブレム内に収納された特殊繊維がセ~クスィ~の全身を覆っていく。
セ~クスィ~のイメージを脳波から読み取り、髪色と同じ炎のような赤いスーツに、チョッピ荒野から見上げた星空を落としこんだような紺色のボディジャケット、そしてその上から、宿屋の女将の装束に似た、金の縁取りが生成された。
そしてその背には、正しき者を照らす光を模った日輪のエンブレムプレートが背負われる。
「正義を照らす情熱の炎!アカックブレイブ!!」
もとより口上なんて、用意していたはずもない。
しかし心の中のアカブレイバーに押されて、勝手に口を突いて出た。
そして仕上げとばかりに高らかに名乗りを終えた直後、アカックブレイブの背後で、変身の成功を祝福するように、謎の爆発が巻き起こったのだった。
続く