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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2022-02-27 00:22:10.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『逃亡者マージン』その23

「もうすっかり良いみたいだな」
結局酒場のカウンターをベット代わりにして一夜を明かし、朝の陽ざしの差し込む客室をキャトルは再び訪れた。
「…ああ」
いつもと変わらぬ調子で話しかけてきたキャトルに対し、ジュエは少々面食らった様子である。
別にあえて隠していたわけではない。
だがしかし、ジュエは、明らかに特異な体の事を知ってなお、キャトルがこれまで通りに接してくるとは思ってもみなかった。

「庇ってくれてありがとよ。…一応、礼は言っとく。じゃあな。もう少し、大人しくしとくこった」
命の心配は要らないだろうが、ジュエのただでさえ白い肌は、消え果そうなほどにより白さを増していた。
まだ失った分の血を取り戻せていないのだろう。
適当に食えそうな獣の肝臓なり、狩ってこようかと踵を返したキャトルを、ジュエは呼び止めた。
「聞かないのか?あたしの身体のこと」

一瞬の静寂が辺りを包む。
「…興味ないね」
「そうか。で、お構いなしにあたしは聞くが、坊やは何でそんなに生き急いでるんだ?お前、その気になれば、避けられただろ」
ジュエの言葉に痛いところを突かれて、キャトルは固まった。

「せっかく俺が気を利かせてんのに、お前はそういうこと聞くのかよ?」
ジュエが引き下がるのを期待して、キャトルは悪あがきを言ってみた。
「別にいいだろ?何せ、乙女の柔肌を覗かれたんだ、それくらいの役得あって然るべきだ」
「…乙女だ?柔肌だ?よく言えたなそんなセリフ」
「自分でも歯が全部抜け落ちるかと思ったよ」
諦めたキャトルはやれやれと頭を振って、ドカッとベッドに腰掛ける。
柔肌云々は置いておいて、無くさせた血の分くらいは、何故だか無駄話に付き合ってやってもいいと思ったのだ。

「…賞金稼ぎまがいの事を始めたのは、歳の離れた妹の為だった」
キャトルは一見、質問の答えには関係の無いような話を切り出したが、ジュエは黙って耳を傾ける。
「妹は生まれつき身体が弱くてな。生命を繋ぐために、高価な薬を飲み続けなきゃならなかった。親もどっかに蒸発しちまってね。俺が稼ぐしかなかったんだ。で、故郷の村のチンケな依頼なんてあっという間に全部磨り潰しちまって、次の街、またその次の街…。ひたすら渡り歩いて、ゴールドを稼いで、妹のもとへ送り続けた」
話を続けるにつれ、キャトルはだんだんと心の重みから前かがみになる。

「間抜けな話だが、あんまりにも離れた時間が長過ぎて、妹の顔もおぼろげになった頃にようやく…とっくの昔に、妹は星になっちまってたことを知った」
もはや他人の家にしか見えない故郷の生家でキャトルを出迎えたのは、使う者もなく山と積まれたゴールドと、もう一度逢いたかったと書き遺された妹の日誌だけだった。

「それでもう何もかもどうでも良くなっちまったが、ただ、何かな、金を稼ぐことだけが、煙草の煙みてぇに体に染み付いて、惰性で生きてる。…あの時ちょっとだけ、これで肩の荷が下りるかと思った。それだけだ。…迷惑かけた。すまん」
「そうか」
「つまらん話だが、まあ、お前の貧相な裸には釣り合っただろ」
「はぁん!?」
貧血からくる目眩で、キャトルに掴みかかったものの捕え損ねたジュエの罵詈雑言を浴びながら、してやったりとニンマリ笑って今度こそ部屋を出ようとする。

「おい、キャトル。あたしの前で、二度と投げ出すんじゃねぇぞ?」
「…善処する」
最後に投げかけられた言葉に適当に応え、廊下に出てしばらく歩いたところで、キャトルは初めてジュエから『坊や』抜きで名を呼ばれたことに、またその時、ジュエはベッドの上で、初めてキャトルに『坊や』を付けずに名を呼んだことに気付くのだった。
                                                                続く
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