パステル調の建物に、すきあらばとふんだんに花壇が配置されたメギストリスの都には、白や薄紫などの落ち着いた色合いであっても、花の髪飾りをまとった小柄な少女の姿がよく似合う。
メギストリスの入り口広場の壁に背を預け、待ち人が来ない退屈から毛先をくるくると弄んでいると、快活な声が響いてきた。
「ごめんごめん!!遅くなっちゃった!」
黄色でまとめられた武闘家らしい動きやすい服装に、流れるポニーテールは四足獣の尾のようにしなり、さながら虎のような印象を受ける少女は、大慌てでやってきたらしく、息を切らしながら現れた。
「あいたっ…!?」
待ちぼうけさせられていた少女は、連れ合いが遅刻してきた事ではなく、その服装を見て、ズベシと軽くチョップを入れた。
「…正装で来いって言ったわよね?」
「あ、あはは…そうは言われましても…ねぇ?」
忘れていたわけではないのだが、持ち合わせの服の中にこれぞ!と思えるものがなく、まあ戦闘装束も正装は正装だと押し切ろうと思ったライティアだったが、そうは問屋がおろさないようだ。
「はぁ…。まあ仕方ない。どうせ行く道すがらだし、ドレスも調達していきましょう」
やや肩を落としながら、ライティアを連れてメギストリスの街並みを歩み始めるのだった。
「これはこれは、いらっしゃいませセイロン様。今日はいかが致しましょうか?」
メギストリス東区、おしゃれストリートの一画に位置する高級ブティックに連れ立って入るなり、奥のカウンターから一目でそれなりの立場と見て取れる立派なスーツを着たプクリポの店員が駆け寄り、頭を垂れる。
「今日は、私じゃなくこちらの、え~と…ゆ、友人に、ドレスを一着見繕ってもらえるかしら?それなりに様になる程度のものでいいわ」
気が付いたらまとわりついていた野良猫。
密かにそんなふうにライティアのことを捉えていたセイロンは、一瞬言葉に詰まりながらも店長にオーダーを伝える。
「承りました」
返事とともに手拍子を一つ。
合図を聞いて現れた店員達が梯子も用いつつテキパキと採寸を進めた。
やがて奥の部屋からまるで刃を鍛えるような激しい音が鳴り響き、瞬く間にライティアの身体に合わせたドレスが仕立て上げられ運び出されてくる。
「うわぁ、ぴったり!」
早速袖を通し、姿見の前でくるくるとドレスを見回すライティア。
ライティアのパーソナルカラーとも言うべき、虎の色合いに染められたドレスが明るく弾む。
「これ、私のと同じデザイン…」
どうして?と目線を向けた先で、店長はサムズアップとウィンクをセイロンに送る。
友人、というフレーズに、粋なサービスをしてくれたようだ。
「…まぁ、良しとしましょう」
ともあれ、準備は整った。
はからずもお揃いのドレスを身に纏い、二人はさらにメギストリス東区の奥地へと足を運ぶのであった。
続く