「おいおい、いいのかあれ?」
「あそこは演習場なんだよ。ちょうど試作品の爆弾を設置してあって良かった。メガボンバーの威力を上げられないか、試行錯誤しててさ。ホントは2番地を演習場に充てるつもりだったんだが、そっちにはゲストハウス建てたからなぁ。その代わりさ」
「まあお前がそう言うなら…」
マイタウンに辿り着くなり、手持ちのナイフのグリップのボタンを押し込んだマージン。
馬車の中で混乱を作るとは聞いていたが、1番地と2番地の間の庭園にギガボンバーだとしても説明のつかない巨大な火柱が上がり、頭上から降り注ぐ土くれを払いながら、開いた口が塞がらないフツキとフィズルであった。
フツキとフィズルまでもが呆然としていることを除けば、狙い通りマージンのマイタウンは蜂の巣をつついたような大混乱である。
そこかしこから制服に身を包んだ荒くれどもがパニックを起こしてまろびでる。
その中にはアカックブレイブと、マージンにとってはもはや懐かしくすら感じるフライナの姿もあった。
紺色の警察衣裳に身を包む敵の一団の中にあって、真紅の魔装とメイド服は非常によく目立つ。
「アカックさんも駆けつけていたか。よし、俺達も…て、おい、何をしてる?」
予めマイタウン外縁にてフツキがピックで昏倒させ奪った敵の装束を身にまとっているとはいえ混乱に乗ずるが吉、しかしマージンとフィズルはというと双眼鏡を片手にじっとアカックブレイブ達の方を眺めている。
その目線は不自然に低い。
「おお~っ…なるほど」
「うん、これはこれは…」
そんな二人が謎の歓声をあげた瞬間といえば、ハンマーを巧みに操るアカックブレイブの背を守る形で、フライナがガーターベルトに留めたスローイングダガーを抜くべくスカートを跳ね上げた瞬間だった。
「…をい!この馬鹿共!!」
「いやまて落ち着け、これには深い訳が…」
「そうそう、止むに止まれぬ事情があるのだ」
「抑えきれない青い衝動の間違いだろ!!もう知らん!先行くからな!!」
もとよりフツキはティードとハクトの安全確保、マージンとフィズルでスケッチブックの入手と手分けする予定であった。
流石は昔馴染みというべきか、くだらないところで行動がシンクロする二人を残し、フツキはマイタウンを駆けるのだった。
続く