そして敵の渦中の二人もまた。
「アカック様、それでは私はここで。奥様達を頼みます!」
「ああ!任された!!」
アカックブレイブもフライナと別れをかわすと、もはや何人目かわからぬ敵を殴り飛ばす。
返す腕でハンマーに引っ掛けた敵の一人をそのまま投げ飛ばし、フライナの道をあけた。
目指す2番地のゲストハウスはまだ遠い。
あらためてハンマーを握り直し、最短距離を駆けるアカックブレイブであった。
「マージン様!」
「おお、フライナさん!無事で良かった!!」
大暴れするアカックブレイブのおかげで、変装の必要もなくなり金庫のある工房へ向かい走るマージンとフィズルのもとへフライナが合流する。
「スケッチブックを取りにいらしたのですね。私もお供を」
話しながらも側面の階段から登り来る敵の一人の太腿にダガーを投げ放ち牽制する。
「助かる!フツキに任せたとはいえ、ティードさんとハクトが心配だ。急ごう!!」
「邪魔だ、どけっ!」
前方に立ち塞がる二人を薙ぎ払いアカックブレイブの腕が伸びきったところを狙い、大男が忍び寄る。
しまった、と思ったのも一瞬、敵はぐるりと白目を向き、倒れ伏した後ろに立つはピックを引き抜くフツキの姿。
「御不要かと思いますが、お手伝いに来ました」
「いやいや、大変心強い」
援軍にニヤリと微笑み、さらに敵の一人を殴り飛ばす。
「右脚接続、バギマ!」
フツキも負けじとスーツに呪文を込め、左脚を軸に回し蹴りを放つ。
小柄なフツキにどうしても不足するリーチと重量をバギ系呪文の風圧で補う鋭い一閃に、思わずアカックブレイブから称賛の口笛が漏れる。
「よし、時間が惜しい、一気に行くぞ。着いてこれるな?」
「もちろん!」
既に脚部スーツにイオ系呪文を込め速度を増しているにも関わらず、それを上回ってみせるアカックブレイブに今度はフツキが舌を巻く。
抜群のコンビネーションで瞬く間にゲストハウスに突入、ハクト達が監禁されていると思しき部屋の扉を開くフツキに対し、言葉や仕草でのやりとりは無くともアカックブレイブがしんがりをつとめる。
「ティードさん!ハクト君!無事か!?」
開け放たれた扉から差し込む光に顔をしかめ、弱々しい声ながらもハクトはフツキに答えた。
「フツキさん?ああ…良かった。必ず助けに来てくれると…。僕のことよりも、フライナさんのことを頼みます…」
「…何を言っているんだ?」
フライナであれば先程…。
しかし確かに、部屋の奥、拷問でも受けたのか、そこかしこに傷を負って倒れているのは間違いなくフライナだ。
唐突にフツキはアズランで見たマージンの偽物を思い出す。
「まさか…。マージン達が危ない!!」
続く