「うっわ…」
吹き飛ばされるモンスターをふんだんに含んだ砂柱とともに浜辺へ生み出された巨大なクレーターを見やり、修繕費を恐れるマージンの口から嘆息が漏れる。
先に吹き飛ばした演習場付近以外は魔法建築工房『OZ』の保険サービスに入っていないのだ。
しかしそんなことはお構いなしに、アカックブレイブは返す腕でさらにハンマーをふるい続け、残るモンスターを次から次へと煎餅に変えていく。
「ああっ…あ…あら~…マジでぇ?…ああ、そんなとこまで…あ~…」
それら打ち据えられたモンスターが壁や石畳に衝突するたびに陥没が起こり、アカックブレイブの激しい怒りを物語る。
と同時に、マージンの口からも都度悲鳴が上がった。
「これは負けていられんな」
アカックブレイブの勲しにあてられ、3番地に辿り着いたフツキもガジェットと呪文を駆使し、砲台に敵を近付けまいと奮戦する。
『フッキー!せめて3番地は無傷で守って!!』
「…はぁ~…善処する。あ、橋が落ちた」
フツキの視線の先で先程アカックブレイブが足蹴にした橋が崩落を起こす。
『ノォ~~~っ!!!』
正直、この緊急時に何を気にしているんだか、という呆れはあるが、モンスターを処理する合間に見える1番地の光景は、何というか、モンスターに攻められるがままの方がマシでは?と思える程には悲惨なのであった。
かくして、1番地をアカックブレイブ、2番地の防衛と全体の管制をマージンが、3番地をフツキが守り、フィズルが順次薬液を量産し、入れ代わり立ち代わり戻り寄る防衛マシンに持たせる。
本来ならばもう1パーティ、あと4人は欲しい所のタイトな人員構成ながらも、マージン達は何とか持ち堪え、悪ふざけをする余裕すら出てきた。
『左舷フッキー、弾幕薄いぞ!何やってんの!?』
「ああすまん、て、そんなはずは…。…!マージンお前!それ言いたかっただけだろ!?」
フツキは素直に詫びたあとで、マージンの蔵書の戦記物に同様の一節があったことを思い出す。
『はっはっはっ』
「後で毟ってやる。真面目に管制しろ!」
『分かってるよ。二人共、今しばらく持ち堪えてくれ!!』
「うぅむ、やはり有象無象。ではこれならどうだ?」一進も一退もしない状況に模造品の竜はしびれを切らす。
自らの左脚を見やると、足の付根がたちまちにただれ始め、そのまま腐り落ちるようにして海中に左脚が落下した。
ゆったりと海底に落着した竜の足は、こびりついた泥が流れ落ちるように形を替え、テンガロンハットにボロボロのマントを羽織った男の姿に落ち着いていく。
焦点の定まらぬ黒き瞳をたたえ、両足に無数のナイフを携えたゾンビは水圧の抵抗を物ともせず、水底を走り始めるのだった。
続く